2. アメリカから日本へ安価にログインする方法
---netcom 社のサービス---
2-1. 押し寄せるメール
海外出張にでる際にいつも問題になるのが、押し寄せるメールをどう処理するかです。みなさんと同じように、私にとっても電子メールは重要な情報源であり、コミュニケーションの手段です。また、私が直接あるいは間接的に管理している多数の計算機は、毎日何通ものメールを自動的に私に送ってきます(そういったメールには、各計算機の「健康状態」や、障害の有無などがこと細かに書かれているので目を通さないわけにはいきません)。平均すると毎日250通以上のメールが私のメールスプールに舞い込んで来ていますので、仮に海外出張などで 2週間メールを読めないとなると、4000通近いメールをスプールに貯めてしまうことになります。これを全て処理するには数日間メールを読み続けなければなりません。自分が苦労するだけならまだいいのですが、重要な連絡や緊急度の高いメッセージも多数含まれている可能性があるので、長期間音信不通になると先方に迷惑をかけてしまうこともあり得ます。もちろん、メールを主たる通信手段とは位置付けず、メールで連絡をしてくる相手が悪いという方針もあるとは思いますが、私の場合は、私がメールを主たる通信手段にしていることはすでに広く知られてしまっているので、いまさらメールを送ってくる相手が悪いと言い放つこともできません。ですから私は、国内外にかかわりなく、2日以上大学を離れるときには、何らかの手段でメールを読むようにしています。
この広報をお読みの方の中には、私と同じように、地球上のどのような場所からでもメールを読もうと努力なさっている方がいらっしゃると思います。この小文は、そのような方の参考になればと思いながら書いています。
2-2. 海外からメールを読む方法。
学外にいるときにメールを読もうとしたら、以下の方法が考えられるでしょう。
- 【方法1】
- モデムを接続したノートブックパソコンを使って、本学の総合情報処理センターあるいは自分の研究室のモデムポートに電話をかけ、日頃使っている計算機にログインする。
- 【方法2】
- インターネットに接続されている計算機を利用している知人を訪ね、端末窓を一つ貸してもらい、東工大の計算機にリモートログインする。
- 【方法3】
- モデムを接続したノートブックパソコンを使って、パソコン通信のアクセスポイントに電話をかけ、パソコン通信を利用する。メールはパソコン通信上で発信する。出発前に自分宛のメールはパソコン通信に転送するようにしておけば、メールを読むこともできる。
- 【方法4】
- 方法3と同じようにパソコン通信にアクセスし、そこからパソコン通信会社が提供している telnet サービスを使って東工大の計算機にリモートログインする。
このうち「方法1」はもっともポピュラーな方法でしょう。国内のホテルではまだあまりみかけませんが、米国のホテルでは電話器に「データポート」と称するモデム接続用のモジュラジャックが予め用意されているところが増えてきていますから、接続そのものは容易です。ただし、電話代は自分で負担しなければなりません。海外からなら当然国際電話になりますから、相当の出費を覚悟する必要があります。
訪問先で「方法2」が可能かどうかは事前によく調べておく必要があります。技術的には可能でも、部外者には計算機を操作させない方針の組織もたくさんあるでしょうから、知人がいるからといっても無理強いはできません。仮に利用させていただけても、何時間も遠慮無く利用できる場合はまれでしょう。というわけで「方法2」は幸運度の支配をうけてしまいます。
「方法3」は安さが魅力です。パソコン通信のアクセスポイントは地方都市にもたくさんありますから、市内通話料金で通話できる場所にアクセスポイントがあれば通話料は「方法1」よりずっと安くすみます。米国では市内通話料金は通話時間に関係なく一定料金なので、一度つないだら極力電話を切らないようにするといっそう安あがりになるでしょう。ただし、ホテルによってはサービスチャージを通話時間に応じて加算する場合があるようですから注意してください。「方法3」はたしかに安上がりですが、東工大の計算機に直接アクセスするわけではないので、操作性に問題があると感じる方も多いでしょう。また受け取れるメールの量に制限を設けているパソコン通信が多いので、大量にメールを送受している方には不向きです。
「方法4」は全てのパソコン通信で提供されているわけではありませんが、東工大の計算機にリモートログインするわけですから、もし利用可能なら「方法3」よりは快適だと言えます。また、メールの送受は本学の計算機上で行うわけですから、パソコン通信サービス側の制限(メールの送受量上限など)にひっかかることもありません。
2-3. 「方法5」
これらに加えて米国では「方法5」があります。米国ではインターネットに接続された UNIX マシンのアカウントを売っている会社がいくつかあるので、このような会社から、アカウントを買ってしまえばよいのです。これが「方法5」です。
アカウントを買ってしまえばあとは簡単。その会社が提供しているモデムポートに電話をかけてログインするだけです。接続先は東工大でなくその会社の計算機になりますが、その計算機から東工大にリモートログインできるので何も問題はないでしょう。また、UNIX 環境が利用できるわけですから、東工大の計算機上のファイルを FTP してきてコンパイルするとか、データを処理するといった仕事も行うこともできます。以下では、「方法5」の例として、米国でアカウントを販売している netcom 社のサービスを紹介します。
2-4. どのようなサービスがあり、いくらかかるか。
netcom 社のサービスにはさまざまなものがあります。個人でログインするためのサービスもあれば、企業が IP 接続をするためのサービスもあります。本小文をお読みの方々は、個人でログインするためのサービスに興味がおありでしょうから、以下ではこれにターゲットをしぼります。
「方法5」を実現するには "Personal Host account" を購入します。このためにかかる費用は以下のとおりです。
- 最初に 30 ドル
- 月々 19.5 ドル (自動引き落としの場合は 17.5ドル)
これで、hohno@netcom.com というアカウントを米国内に作り、維持できるます。アクセスポイントは西海岸を中心に全米の200都市にあり、今も毎月のように増え続けていますので、みなさんが国際会議などで立ち寄る都市には、たいていアクセスポイントがあるのではないかと思います。市内通話でかけられる範囲内にアクセスポイントがなければ、最寄りのアクセスポイントに市外通話をかけることになりますが、米国は市外通話が割高なので、こうなるとうまみは半減してしまいます(それでも「方法1」や「方法3」よりは快適だと思いますが)。なお、この小文執筆時点では、モデムは全て V.32bis のようですから、利用者側が同等のモデムを用意しておけば、文字端末の通信速度としてはまずまずの性能が得られると思います。
さて、自分のアカウントが netcom.com にできるということは、インターネット上の計算機(netcom社の計算機の実体は多数の Sun ワークステーション)を利用する環境を取得したということです。すなわちインターネット上のどこからでも(もちろん東工大からでも)リモートログインすることができます。つまりnetcom.com 上の自分のアカウントの環境整備はいつでも東京でできるわけです。ツールの類は充実していて、たいていのものは /usr/local/bin 等に用意されているので、わざわざ用意する必要はりませんが、日本語対応のソフトウェアはいまのところ見当たらないので、自分で用意しなければなりません。この作業はいつでもどこからでも(東京からでも)できますので便利です。私の知人には仕事の合間をぬって netcom.com にリモートログインし、nemacs や mule などの「大物」をインストールしている人もいます。
2-5. 申込方法
申し込み作業はオンラインでできます。VT100 互換の端末(パソコン上からなら hterm, X window 上からなら xterm, kterm など)から netcom.com にtelnet してください。ログイン名を聞かれたらゲストアカウント名 "guest" を入力し、パスワードを聞かれたら単にリターンキーを押してください。さらに端末タイプを聞いてきますので、"VT100" を選んでください。するとメニューが面画現れます。サービス案内などいろいろな項目があるので、興味がある項目を選んで覗いてみるとよいでしょう。なお、メニューの各項目の移動は矢印キーで行うことができます。
サービス案内等のドキュメントを読み、申し込むことになったら、メニュー中の "Registration"を選んでください。申込手続きがが始まります。あとは以下のような質問に順次答えていけばOKです。
- 希望するサービスの種別
- 希望する login 名 (既存の login名 と衝突しなければ受理される)
- 希望する login shell (/bin/csh, /bin/tcsh, /bin/bash などがある)
- パスワード
- 住所氏名など
- クレジットカード番号
最後に「私はnetcom社のサービスを規定にしたがって利用します」という旨のメッセージが英語で表示され、このメッセージをこのまま入力しろと言ってきます。同時に表示される登録内容を確認し、それが納得できるものであったら、表示されたメッセージを入力してください。これで手続きは完了し、1〜3日でアカウントが作成されます。アカウントが作成されても特に連絡はありませんので、時々アクセスしてみる必要があります(new users guideが郵送されては来ますが)。なお、netcom 社のサービスはどんどん変化しているようですので上記の段取りがいつまでもこのままである保証はありません。この小文でnetcom 社のサービスに興味を持たれた方は、まず 上記の方法でアクセスしてみることをおすすめします。
ところで、本広報の13ページにも関連記事がありますが、最近インターネット上の計算機に不正侵入を試みる不心得者(いわゆるcracker)が増えています。彼らは、まずパスワード破りをして誰かのアカウントを不正利用可能にし、そこを拠点にして他の組織にアタックをかけるという行動をとります。その際、不心得者は逆探知を恐れ、不正取得したアカウントにモデムを介してログインすることが多いようです。そういう意味では netcom 社のサービスは恰好の標的です。全米にあるアクセスポイントのどこからに電話をかけ、誰かのアカウントに盗んだパスワードを使ってログインしたら、不心得者を捕まえるのはきわめて難しいからです。このようなトラブルに巻き込まれないためには
- netcom.com のパスワードは定期的に変更する(できれば国際電話をかけて現地のモデムポート経由で直接 login して作業するのがよい)。
- netcom.com のパスワードは東工大の計算機のものと同じにはしない。
- 東工大の計算機の ~/.rhosts に netcom.com のアカウントは書かない。
といった対応をとることが必要です。
[校正時補足]
1月25日現在、本文で紹介したオンライン登録サービスは一時的に停止されているようです。詳細は netcom.com に telnet してご確認ください。
(Titanet 運用センター 大野 浩之 講師)