つれづれなるその他の書物のこと

普通の本の読書記録、再開。でも図書館で借りた本とかがかなり抜け落ちています。
なお、技術書の類はここには含まれていません。

文学の徴候

文藝春秋, 斎藤環
ISBN: 4-16-366450-5
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私という小説家の作り方

新潮社, 大江健三郎
ISBN: 4-10-303617-6
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心をもつ機械

岩波書店, J・バーンスタイン著 米澤明憲, 米澤美緒 訳
ISBN: 4-00-005367-1
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新装版 計算機屋かく戦えり

アスキー, 遠藤 諭
ISBN: 4-7561-4678-3
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コンピュータが計算機と呼ばれた時代

アスキー, 財団法人 C&C振興財団 編
ISBN: 4-7561-4677-5
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日本のコンピュータの黎明期についてまとめたもの。時系列順に説明されていて 俯瞰するのに適している。個々の内容については、上記の「計算機屋かく戦えり」を 読むとよい。

個人的に感動したのが、60年代の性能でも新幹線の予約システムを実現していたことと、 そのインタフェースとして既存の印鑑を使ったインタフェースをそのまま踏襲するために、 印鑑にID番号を埋め込んで印鑑としてもタグとしても使えるようにしたというところ。

いったい現在のコンピュータ屋は何をやっているのだろうかと、強く反省した。


「超」整理法 - 情報検索と発想の新システム

中公新書, 野口悠紀雄
ISBN: 4-12-101159-7
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うーん。書いてあることは分かるというか、個人的には特に目新しくない。
そもそもこのところ紙の資料を扱うことがめっきり減ったので(印刷したほうが 読みやすいことは多いけど、マスターは電子情報になっていることが多い)、 書類の整理法があまりピンとこないというのはある。
あとコンピュータについては情報が古いので、あまり参考にならない。
かたっぱしからテキストファイルに書いておいてあとから検索するなんてのは 昔っからやっているし。
というわけで、今読んでもあまり参考にならないかも。


欺術(ぎじゅつ)―史上最強のハッカーが明かす禁断の技法

ソフトバンククリエイティブ, ケビン・ミトニック (著), ウィリアム・サイモン (著), 岩谷 宏(飜訳)
ISBN: 479732158X
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例のミトニックによる、ソーシャルエンジニアリングの実例集。
いや、本当に実例が山のように載っている。一応フィクションのようだが、実際に あった事例だとしてもおかしくない。資料としての価値も高いと思う。
日本向けには、日本人の気質を考えて応用することを考えたほうがいいかもしれないけど。

以下メモ。ソーシャルエンジニアが利用する人間の弱さ。


誕生 国産スパイ衛星 独自情報網と日米同盟

日本経済新聞社, 春原 剛
ISBN: 4532165148
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テポドン・ショックによって火がついた日本独自の情報衛星の打ち上げに関する本。
技術的なことは何も書かれていない。テポドン・ショックを始まりとして、計画を開始する ところと、打ち上げのことについての政治的な諸々が書かれている。
本当は計画がはじまってからの技術陣の戦いというのもドラマだと思うのだが、 それを期待するのは無理だろう。実際ほとんどが機密扱いなようだし。

技術的な部分については、おそらくLEOに関する諸論文などを読むのが良いと思う。


ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち

オーム社, ポール グレアム (著), 川合 史朗 (翻訳)
ISBN: 4274065979
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内容は刺激的だし、翻訳もすばらしい。良く出来ている本だ。この本はきっと、将来 何度も読み返すことになるだろう。
しかし残念なことに、この本に書かれていることは、ハッカーもしくはそれと等価な 人種にしか本質的には理解されないと思う。そうでない人種からみたら、他の宗教の 人間が自分達の正統性を訴えているように見えるかもしれない。 もしくは(特に若い読者は)ハッカーでないくせにハッカーになりたがる 悪い意味でのワナビになってしまうかもしれない。
でもそんな連中のことを気にしていてもしかたがない。この本を読んで共感を得た のなら、やるべきは語ることではなく、ハックを実行することだ。


テイクダウン

徳間書店, 下村 努 (著), ジョン マーコフ (著),
ISBN: 4198605017 (上巻), 4198605025 (下巻)
[amazon(上巻)] [amazon(下巻)]

カッコウの卵よりも、新しい内容だけに、使われている手口も新しい。ただ、想定読者 を一般人にしすぎたせいか、技術的な部分の掘り下げが浅いのと、翻訳がいまひとつ であることが気になった。もうちょっとパンクな文章にしても良いと思う。


カッコウはコンピュータに卵を産む

草思社, クリフォード・ストール (著), 池 央耿 (翻訳),
ISBN: 4794204302(上巻), 4794204310(下巻)
[amazon(上巻)] [amazon(下巻)]

僕の妻はエイリアン 「高機能自閉症」との不思議な結婚生活

新潮社, 泉流星
ISBN: 4-10-300111-9
[amazon]

現代作家ガイド 3 ウイリアム・ギブスン

彩流社, 巽孝之
ISBN: 4-88202-486-1
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小説で読む企業会計

法学書院, 千賀貴生
ISBN: 4-487-03205-0
[amazon]

図解入門よくわかる量子力学の基本と仕組み

秀和システム, 潮 秀樹
ISBN: 4-7980-0919-9
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暗号の数理 (改定新版)

講談社ブルーバックス, 一松 信
ISBN: 4-06-257490-X
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RSAなどの実際の計算方法が詳しく載っているのがとても参考になった。
演習問題としてサンプルプログラムを作ってみても楽しいかもしれない。


カオス - 自然の乱れ方 -

裳華房, 竹山 協三
ISBN: 4-7853-8558-8
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サイバーパンク・アメリカ

勁草書房, 巽 孝之
ISBN: 4326098244
[amazon]

サイバーパンクの生の歴史に触れることができる。サイバーパンクの精神を学びたいと 思う人には必読書だと思う。


28歳からのリアル

WAVE出版, 人生戦略会議
ISBN4-872-90146-0
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どうしても生活するには金がいる、というわけで、実は結構マネー編と内容がかぶっている。
マネー編はこの本のお金の部分を細かく砕いたという感じ。両方読んで損はないと思うけど、 どちらか片方なら切実な問題としてマネー編を読んだほうがいいかも。


28歳からのリアル マネー編

WAVE出版, 人生戦略会議
ISBN4-872-90197-5
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数字が色々出ているので、人生設計を考えるにあたっての目安となり、 資料として参考になった。
もっとも、人生設計と言っても、今の気楽な身分とこの先のことでは、分からないこと だらけなのだが。


35歳までに必ずやるべきこと―運をつかむ人になれ

かんき出版, 重茂 達
ISBN4-761-26024-6
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色々「こうすると良いですよ」ということが書いてあり、まあ再発見的なものではあるが、 整理されているのを俯瞰するくらいの価値はあるか。それ以上の衝撃的な内容は 期待するべきではない。ちゃんと生きている35歳にとっては、当たり前のことばかり だから。
とは言え、まあ先達の言うことには耳を傾けましょう。


萌える株式投資

KKベストセラーズ, ミルミル
ISBN4-584-18850-5
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萌え本だが、実は萌えはあまり意識していない作りになっている。単に、オタク肯定、 オタク読みやすいように、という点だけで「萌える」と言っているのだろう。 それはそれで良いと思う。下手に狙って失敗するよりは。
内容だが、実体験に基づきつつ、ノウハウ的なものを少し混ぜて、入門編としては 悪くない内容なのではないかと思う。


冲方式 ストーリー創作塾

宝島社, 冲方丁
ISBN4-7966-4658-2
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小説技術本は沢山ある。しかし多くは実用的でない。
この本が技術論として実用的かというと、そういう訳ではない。この本では、実際に著者が 作品を書いた時に、どう考え、どういう資料を使い、どういう素材を用意したかが 書かれている。
しかしそれで良い。著者の主張は、小説家が次々と書いた時のノウハウを出していけば、 演繹的に何か知見が得られるのではないかというものだからだ。
その点で、この本では言行が一致している。
多分こういう本があと10冊くらい出てくると、とても面白くなると思う。
少なくとも資料として、私には役にたった。


萌えるSE業界ノベルズ お兄ちゃんはプログラマ

技術評論社, 藤山哲人
ISBN4-7741-2359-5
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いわゆる「萌え本」の一つだが、自分の業界に関係あるので、買ってみた。
ポイントは「ノベルズ」となっているので、小説として刊行されている点である。 買う前にイメージしていたのは「第六大陸」や「ソリッドファイター」のようなもので あった。
しかしそのイメージは、あっさりと崩れることとなった。あまりのことに、ここに 思いの丈をぶつけてみたい。3つの視点から感想を述べることにする。

まず最初は、「小説として」の感想である。小説として売られているのだから、 小説としての出来はどうなのかを論じるのが重要であろう。
まずタイトルに「ノベルズ」となっているが、なんと四六判である。この時点で既に あたまがクラクラしている。そして本文を開くと、奇妙な違和感に気が付く。 すべての会話文の前後が一行開いているのである。
エロゲー?
それでも冒頭を読みはじめる。本文は主人公視点三人称で書かれているが、 最初の段落の最後まで主人公の姿が描写されないため、段落丸ごと、主格が分からない。 下手くそである。ストーリーに関しても、起承転結がさっぱり分からないし、最後に いきなりヒロインの女の子と主人公が急接近しておしまい。 キャラも書き分けられてないし、ストーリーに絡ませられそうなキャラを全然使っていない。
小説の体をなしていない。論外である。

次に「業界ネタ本」としての感想を述べる。
簡潔に言えば、技術レベルが低い。
MacOS XがLinuxをベースにしているとう記述は噴飯ものだが(これは後に出版社の サイトに正誤表が載っていた)、プロジェクトの進め方、ものの作り方、すべてにおいて レベルが低い。そのくせに、枝葉末節については細かく書いてある。
例えて言えば、自動車の開発プロジェクトの物語なのに、ハンドルの形を丸にするか 四角にするかを延々と記述しているような、そんな印象である。 この著者は本当にまともな開発プロジェクトの中でプログラムを書いたことがあるの だろうか。悪い例だけを出して「業界って面白いね」と書いているだけにしか見えない。
これは誰に向けた本なのだろう。新たにこの業界に入ろうとしている、もしくは入った ばかりの人に向けたという記述を見た記憶があるのだが、誤解を与えるだけなので、 読ませるべきではない。
そういう訳なので、業界本としてもまったく面白くないし、価値もない。

最後に「萌え本」としての感想である。
残念ながら、まったく萌えない。
まず駄目なのが、表紙のイラストレータと本文のイラストレータが別の人なのである。 これだけで駄目だというのが分かるだろう。大人の事情というのが透けて見える。 それは同時に本気で萌え本を作っていない証拠でもある。
この本の萌えキャラは妹キャラ1人である。いちおうキャリアウーマン系巨乳も出て くるのだが、まったく絡んでこない。もったいない。 しかも、「妹キャラである」と背中に書かれている『だけ』という感じで、全然偽妹と いうものの本質を分かっていない。
繰り返しになるが、まったく萌えない。

以上のような状態なので、この本の存在意義がまったく理解できないし、 読む価値もないというのが私の感想だ。

自閉症の子どもたち

PHP新書, 酒木保
ISBN4-569-61707-7
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医学部残酷物語

中公新書クラレ, 保阪正康
ISBN4-12-150025-3
[amazon]


病院で死ぬということ

文春文庫, 山崎章郎
ISBN4-16-735402-0
[amazon]


ホスピスでむかえる死 安らぎのうちに逝った七人の記録

文春文庫, 大沢周子
ISBN4-16-765677-9
[amazon]


自閉症だったわたしへ

新潮文庫, D・ウィリアムズ
ISBN4-10-215611-9
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自閉症は、インタフェースの障碍である、らしい。知能には問題ない高機能自閉症 (ハイファンクション)の場合、頭の中ではその人なりの世界や論理がきちんと成立している。 しかしインタフェースが人と違うので、その世界を見ることも他人に理解してもらうことも できない。
この本の貴重な点は、そんな自閉症患者の頭の中を知ることができる点である。


ケアを問いなおす ― <深層の時間>と高齢化社会

ちくま新書, 広井良典
ISBN4-480-05732-3
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高齢者医療についてちょっと調べてみようと思い、そのとっかかりに買ってみた。 内容としては、ターミナルケアに始まり高齢者介護などについて、概説している。 主に行政や制度を中心に言及しているが、現場の施設からの声もきちんと採り入れて いる。最後には<深層の時間>という概念を持ち出して、ケアの主体と対象者との 関係の概念的部分を堀り下げている。
が、やはり良くも悪くも視点が高い点が特徴だと言えるだろう。そういうものの見方は とても重要なのだと思うが、一方でgoogleなんかで終末医療や介護の体験記なんかに 書かれていることとの間に、温度差があることは否めない。どちらに共感できるかは その人の立場によって違うだろうし、どちらが良いということもないだろう。
本当に難しい問題だと思う。


コーヒーが廻り世界史が廻る ― 近代市民社会の黒い血液

中公新書, 臼井隆一郎
ISBN4-12-101095-7
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たまたま古本屋で目に付いたから買ってみた。コーヒー好きな人の蘊蓄本としては 二度三度と読み返していいかも。


大蔵省 ― 官僚機構の頂点

講談社現代新書, 川北隆雄
ISBN4-06-148932-1
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二冊続けて大蔵省関係の本を読んでみた。上の本の方がまず大蔵省の組織概要など の説明から入っていることと、下の本の方が時系列的に後の話題までカバーして いるので、上を読んでから下を読んだ方がよかったかなと思っている。


大蔵省権力闘争の末路

小学館文庫, 歳川隆雄
ISBN4-09-416721-8
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興信所

朝日文庫, 露木まさひろ
ISBN4-02-260411-5
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あんまり整理されているとは言い難いが、事例集としては面白い。


発想法 ― 創造性開発のために

中公新書, 川喜田二郎
ISBN4121001362
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KJ法の真似事自体は何度もやっているのだが、原典になるこの本をちゃんと読んだこと がなかったので、改めて読んでみた。もともとの動機付けが非常に良く分かった。 続編も買ってあるので、時間をみつけて読んでみたいが、その前に、数年前に読んだ 発想法などの新書系を改めて読み直して概観しなおそうかとも考えている。


少女民俗学

光文社, 大塚英志
ISBN4-334-06042-0
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男性がなぜ「マリみて」にはまるのか、というのも、少女性の追求の果てにある中性の 追求ではないかと思う。女性がBLにはまるのも、根っこは同じなのではなかろうか。 つまり女性からみたBLは「漢×漢」ではなく「男×中性」or「中性×中性」なのである。

ではなぜ少女性と中性を求めるかというと、それは日本古来の土着の巫女信仰に 根底があるものと考えられる。
なんて感じで、BLとかマリみての話題から少女民俗学へと繋げてみた。


「おたく」の精神史 一九八〇年代論

講談社現代新書, 大塚英志
ISBN4-06-149703-0
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1980年代、自分はただの子供であり、メディアのこちら側にいる存在でしかなかった。 他の子供よりアニメを見ていたとは思うが、それはあくまでテレビという メインカルチャーのデバイスを通してのものだった。それを改めて内側の視点から 総括した本として、興味深い。同じように90年代を総括した本が出るのは、いつに なるだろうか。


バカの壁

新潮新書, 養老孟司
ISBN4-10-610003-7
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内容的には、まあ特に新しい発見もなく、「ああそうね」という感じのものばかり なので、毒にも薬にもならずというのが正直な感想。ベストセラーになるような 本ではないのではないかと思う。
何がアレかというと、著者が喋ったことを編集者が書きおこしたということで、 構成にメリハリがない。なんとなくダラダラと思うところを連ねているだけにしか 見えない。もし一回全体を見直して、構成に手を入れたとすれば、更に読みやすい ものになったのではないかと思うと、勿体ないというか、手抜きなのではないかと 勘ぐってしまう。


UNIXの1/4世紀

ASCII Peter H.Salus (QUIPU LLC 訳)
ISBN4-7561-3659-1
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初期のUNIXの歴史を示した書。表紙に「USENIX '83 SEX DRUGS AND UNIX」と 書かれた缶バッチがあったりして、やっぱりUNIXってのはパンクなんだなあと 思う。
amazonの書評とかだと、訳がボロボロだと酷評されているが、まあ読めてしまった のは多分私が前提の知識を持っていて補完できるからなのかもしれない。
ちなみにBSDの歴史については、 「バークレー版UNIXの20年 (UNIXが、AT&Tの所有物からオープンソースソフトウェアになるまで)」 に、特に著作権裁判などの経緯を含めて、詳しく書かれている。


SAS戦闘員 最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録

早川書房 アンディ・マクナブ (伏見威蕃 訳)
ISBN4-15-208070-1
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テロリズムとはなにか

文春新書 佐渡龍己
ISBN4-16-660124-5
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情報テロ サイバースペースという戦場

日経BP社 江畑謙介
ISBN4-8222-4116-5
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概観するには良いかもしれない。
「情報テロ」を主題にしている割りに、コンピュータ関係の記述に首をかしげたく なる箇所が多かったのが、素人向けに簡単な表現で説明しようとしてピントが ぼけているのか、著者の理解が不足しているのかは、いまひとつ分からなかった。
なんとなく、本質的な問題に踏み込めていないような印象を受けた本だったが、 その本質が何なのかは良く分からない。


ニーチェ <永劫回帰>という迷宮

講談社選書メチエ165 須藤訓任
ISBN4-06-258165-5
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(抜粋)
民衆にとっては、「一事について有り余っている者」こそ、「偉大な人間」 であり「天才」である。(略)「障害」にその人の個性を認めるところに、 民衆の知恵があるというのだ。
とかなんとか。


心理学化する社会 なぜ、トラウマと癒しが求められるのか

PHP研究所 斎藤環
ISBN4-569-63054-5
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斎藤環氏の著作は非常に読みやすい。何故かと考えると、我々と同じ視点で、 我々と同じ言葉で書いているからだと思う。それでいて、我々(というのは ヒキヲタのこと)より高い、俯瞰した視点で書かれているので安心できる。 大上段でもなく、かといって内側からでもないバランスの取れた立場という のを、今後も取り続けてもらいたいものだと思う。
例によって、印象に残った箇所を引用しつつ。

さて、本書で指摘されていることの一つに「自称アダルトチルドレン」や 「自称ひきこもり」の増加が挙げられる。これはACやひきこもりのファッション化 によるものであるとも言える。この点について、私は某ひきこもり小説家のファン MLを運営する立場として自省しなければならない部分があるかもしれない。 つまり、ひきこもりのファッション化の片棒を担いでいるのではないかという 点である。
しかし一方で、このようなファッション化は、神経症やAC、ひきこもりなどを 社会的に認知させることによって、その患者を救おうという戦略(そしてそれは 斎藤環氏が取って来た戦略でもある)の副作用であるとも言える。そして、 ここまで明確かつ積極的な広報の意図はないものも、私もこの戦略には賛成して いるし、某ひきこもり作家のファンであるというファッションによって救われる 部分があれば、それで良いのではないかと思う。また同時に、ファッションでは 救われない人がこのコミュニティから離れていくのであれば、それもまた受容すべき ことであると思う。「なれあい」に救われる場合もあるだろうし、救われない場合も あるだろう。必要なのは多様性であるので、「なれあい」を必要としている人に なれあう場所を提供できればそれでいいのではないかと思っている。

これがニーチェだ

講談社現代新書 永井均
ISBN 4-06-149401-5
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社会主義運動半生記

岩波新書 山辺健太郎
ISBN


国会議員を精神分析する 「ヘンな人たち」が生き残る理由

朝日新聞社 水島広子
ISBN4-02-259827-1
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国会議員の精神構造について、「自己愛パーソナリティ」という切り口から 述べている。
政治家と官僚との関係についての章で、「『政治家』の自己愛を満たすことは、 政策面で官僚亜g好き放題にできる土壤となると共に、チヤホヤすることに よって『政治家』を自立心という点からも骨抜きにしていく意図があるのでは ないかとすら思える」という部分がある。この内容と、日本人の依存体質に ついて述べられた他の文献での、子供を育てる上で自立心を育てずに骨抜きに するというような内容とが、オーバーラップして見えた。
それからすると、官僚というシステムは、日本においては、国民性を背景に して必然的に生まれて来たものなのではないかと思えてきた。
両者の比較という視点で、少し文献を読み返しつつ整理してみたくなってきた。


短篇小説講議

岩波新書 筒井康隆
ISBN4-00-430128-9


博士の奇妙な思春期

日本評論社 斎藤環
ISBN4-535-56197-4
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1章と2章は過去の著作のまとめtぽい感じ。後半は散逸的にトピックを 選んで述べている。根底にあるものは共通しているわけだが、斎藤先生は 「サブカルの人」的立場も持っていつつも、人を救おうという医者の視点が 背景にあるように感じるので、読んでいて共感できるし安心も出来る。


はじめての哲学史講議

PHP新書 鷲田小彌太
ISBN4-569-62171-6
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哲学史の復習をしておきたくて読んでみた。内容としては、ギリシャ哲学から 現代の哲学までを網羅している。日本の哲学が含まれていないが、それはまた 別の本を読めば良いだろう。
というわけで、目次的意味での内容は良いのだが、資料としては、哲学者の フルネームが書いていないとか、どこの国の人か書かれていないとかいう 欠点がある。それになによりも、文章がヘタクソ。話にならない。
まず、この手の正確を期す文章では使えない構文(日本語に存在しないから)を 使っていたり、助詞の使い方のちょっとした違いで理解しづらくなっていたり、 後のページで説明される単語が人名が何の説明や(後述)とかの記述なしに 出てきたりしている。非常に理解しにくい。また、文系の人特有の、無意味に まどろっこしい言葉の転がし方をしている箇所もある。
それだけなら仕方がないなあで済むのだが、この本は冒頭に「内容を落さず、 知的なことに興味のある人ならばだれでも読解可能なものを、ということです。 普通の日本人にわかる、わかりやすい日本語で、ということです」と書かれている。 全くもって実践できていない。更に、この著者は「入門・論文の書き方」といった 本も出版しているらしい。
論文の書き方以前に、日本語の書き方を勉強しなおして もらいたい。


僕が右翼になった理由、私が左翼になったワケ

晩聲社 鈴木邦男・和多田進
ISBN4-89188-266-2
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精神分析のおはなし

創元社 小此木啓吾
ISBN4-422-11200-7
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あまり「精神分析」という学問の話ではなくて、

という感じ。当初期待していた内容とは違っていたが、これはこれで興味深く 読めた。
特に後半の「喪」の話。喪失をいかにして克服(というよりは消化)するかという 話なのだが、考えてみれば人生というのは日々何かを失いながら生きている わけである。中年以降であれば、日々若い頃の体力気力を失っているだろうし、 十代二十代であっても日々「可能性」を失って生きているわけだ。ここで、若い うちのそのような可能性の喪失に注目すると、可能性の喪失をいかにして 受け入れて消化するかが(斎藤環が言うところの)社会的去勢なのではないかと 思う。

図解雑学 精神分析

ナツメ社 富田三樹生:監修 ・ 小谷野博:著
ISBN4-8163-3084-4
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図解というくらいで、半分のページは図。精神分析の歴史について、 フロイトを中心に説明している。入門としては良いかと。


OK?ひきこもりOK!

マガジンハウス 斎藤環
ISBN4-8387-1439-4
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斎藤先生とサブカル系の人との対談とか。
印象に残った箇所をメモしてみる。括弧内は個人的意見。


君たちはどう生きるか

岩波文庫 吉野源三郎
ISBN4-00-331581-2
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滝本関係で目に入った本なので読みました。
この本が書かれたのは1937年ということで、昭和12年です。昭和12年というと、 2.26事件の翌年。盧溝橋事件の年。軍部の発言力は強くなる一方で、日本が 戦争に向かっていく最中の時期です。そのような中にあって、この本のような 思想を持ちそれを発言できるということは、非常に意義のあることだと思った。 とはいえ、この本もその数年後に発売禁止になってしまうのだが。
さて、昨年夏以来の俺テーマは、日本の近代史で、これがなかなか難しいの だが、この本を読んで改めて近代日本の思想史についても勉強しないといけない と思った。軍が何をしたかというのは表面的な事実でしかなく、心ある人びとが 何を考えていたを学ぶ必要があると思う。同じ理由で、近代日本の科学史も 学ばないといけないかもしれない。
さしあたり、高校の時に学んだ哲学史の概論をすっかり忘れているので、復習 しようと思いいくつか本を注文してみた。


お役所の精神分析

講談社 宮本政於
ISBN4-06-208638-7
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えーと、これ読んで、とりあえず父親に天下りだけはするなと言おうと決意 しました。とか思っているうちに父親は良く分からないクラスチェンジをする ことになりましたが。


中学生日記

若者の感性を注入したく思い、図書館で適当に拾って読んでみる。
予想外に良くできたシナリオだった。小説としては薄っぺらいけれど。
てっきりエセヒューマニズムの塊かと思ったが、そんなことはなく(まあ一部 納得いかない展開はあるが)、まあそれなりに考えて作ってあるなと思った。
ただ、「中学生」日記というくらいで中学生を対象読者にしているのではないかと 思うのだが、文字の大きさとか装幀とか、どう見ても小学生向けなんだよな。 もしかして最近の中学生はまともに本を読めなかったりするのだろうか。それとも、 誰でも読めるようにあえて対象年齢を落しているのだろうか。私にはあの文字の 密度は小学校低学年向けとしか見えないのだが。

脳と心の量子論

講談社ブルーバックス 治部眞里, 保江邦夫
ISBN4-06-257216-8
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「職員室」の心の病

講談社 大原健士郎
ISBN4-06-208716-2
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17歳という病 その鬱屈と精神病理

文春新書 春日武彦
ISBN4-16-660262-4
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自分の記憶を織り交ぜながら17歳という時代の精神構造について語る。 考えてみると、現象としての17歳の色々と、精神分析の結果としてシンボリックに 解析される17歳の色々との間には、やはり乖離というか距離感というのがあるわけで、 それの中間に位置するような感じの本。
1章と2章はそんな感じで読めた。
3章はエッセイ風味で、まあ色々ネタをインスパイアされたので、よし。
4章以降はなんというか、筆が走りすぎというか、あんまり。というか共感できな かった。内容というよりも、書き手としてこういう書き方をしてしまうことに。

ところで、この本では色々若者に対して共感できないことや、社会に対する苦言 やらを色々書いているのだが、しめくくりとしてじゃあ筆者の子育てはどうなのよ という問いに対して「わたしには子供なんかいません」と答えている。
色々考えた結果、子供を持たないという選択をしたとのことだ。それも一つの選択 だろうと思う。
しかし現象だけを取りだして遠くから眺めてみると、最近親になることを拒否する 若者が増えているという現象もまた社会の中で話題に挙がっている。この本の筆者の 年齢からすると、そういう時代での選択ではないので、ここで筆者もまた同じ例では ないかという主張は更々なく、ただ考察をする上でのきっかけとして挙げているだけ なので留意して欲しい。

さて。
「親になることを拒否する若者が増えている」という話題の主軸は、子育てに恐怖を 感じて親になることを恐がり拒否し子供を作らない夫婦が増えているということで ある。色々考えた上での選択ではなく、単に子育てという未知の経験が恐いので 子供を作らないというものである。同じコンテキストで、子育てにより自分の生活 が崩されることを望まない夫婦が増えている、ということも語られる。でもって、 私は両方がなんとなく分かるのだな。子供が欲しいという純粋な欲求もあるのだが、 同時に今の世の中で子供をどう育てていけば良いのかとい不安も、今の自分の生活 を崩したくないという気持ちも、どちらも分かる。
前者については……、あー、長くなるからやめよう。どちらのケースも、周囲を 取り巻く社会の環境を見たら必然的に発生するだろうなと考えられる問題だと思う。 一つ言いいたいのは、選択をするためには考えて考えて考え抜いた結果として、 選択をするべきだということ。


最新 宇宙開発がよくわかる本

中経社 中村浩美
ISBN4-8061-1265-8
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最新といっても、1999年時点での本なので。
なんでこの本を図書館で借りてきたかというと、未来予想遊びをするにあたって、 宇宙開発はどういう方向に進んで行くのかなと思ったから。一つ言えるのが、 「どういう動機で」というのを同時に考えないと未来予想にならないなということ。 20世紀後半に宇宙開発が進んだのは冷戦の中での競争があったからだとも言える。 さて、現代と近未来を考えると何が後押しになるだろうね。探究心とか国際協力とか そういうキーワードだけでは足りないような気がするな。


従軍慰安婦

岩波新書 新赤版384 吉見義明/著
ISBN4-00-430384-2
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二つ下の本(「自虐史観」の病理)の反対側の視点の本。
とりあえず二つ下の本については、以下の二点だけを指摘しておく。

というわけで、両方の視点の意見の本を読んでみたのだけれど、問題になるのは 資料や事実の解釈とか、信憑性の重み付けの相違とかがあったりして、なかなか 噛み合った議論をするのは難しいなあというところ。
一つ読んでいて感じたのが、おそらく当時の戦争の前線は一言で言うと 「もう何がなんだか良く分からねえや、あひゃひゃひゃひゃ」という精神状態に なっていたのではないかと想像できる。その原因は何かと考えると、 現場の将校のリーダーシップの欠如とか、目標が不明確な(戦争という)プロジェクト そのものだとか、個々の兵隊のメンタルヘルス管理の欠如とかが挙げられると 思う。そして、おそらく現代を生きる我々が最も真剣に考えなければならないのは 過去の歴史にどういう事件があったのかということではなく、その原因となった 体質が現在でも改善されていないことではないだろうか。中間管理職の リーダーシップの欠如とか、目標が不明確なプロジェクトだとか、会社員の メンタルヘルスに関する認識の欠如とか。歴史上の事件の各論は専門家に任せて おけばよい。もし現代においても病源が残存しているのであれば、それを修正 することが現代の日本人がやることではないかと思う。これが現時点での 「自分自身の立ち位置」に関する結論の一つである。

頭を鍛えるディベート入門

講談社ブルーバックス 松本茂
ISBN4-06-257112-9
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ディベートという競技自体には全然興味がなかったのだが、実際のディベートの 競技をしているところを見たくなった。でもこれは見る側にもそれなりの技術を 要するものだと思う。


「自虐史観」の病理

文春文庫 藤岡信勝
ISBN4-16-719604-2
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この本の著者は「新しい歴史教科書を作る会」の主要メンバーであり、この本 の中では主にいわゆる従軍慰安婦問題に関する報道の誤りなどについて述べられて いる。南京事件については具体的な話しが少ないので、そちらは別の資料を読む 必要があるだろう。
個人的な感想としては、前半は極めて理路整然と事実関係を述べているように 思えたが、後半になって右とか左とかその手の話しになってきて、根が技術屋で ある私としては事実だけを説明してくれれば右とか左とか思想団体とか派閥とか の勢力争いとかの話しはどうだって良いのだがというところではある。
しかしどうもその手の話しを避けて通ることはできないようで、近代史を学ぶ 上で共産党がどういう動きをしてきたのかは調べる必要がありそうではある。

昨年の夏以降、俺的テーマは日本の近代史なわけだが、結局明治以降の歴史や 戦後処理の問題などについて自分の立場を模策しないことには、そこから続く 現代に置いて自分がどういう立ち位置を取るべきなのかが分からないのである。


キャラクター小説の作り方

講談社現代新書 大塚英志
ISBN4-06-149646-8
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ハリウッド脚本術

フィルムアート社 ニール・D・ヒックス著/濱口幸一
ISBN4-8459-0117-X
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内容以前に飜訳の下手さを何とかしてほしい。


物語の体操

朝日新聞社 大塚英志
ISBN4-02-257546-8
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いわゆるライトノベルを書いてみようかなと思っている人には良い本かと。 あと文庫版が出ています。こちら [amazon]


暗号解読入門

PHP研究所 高川敏雄
ISBN4-569-62550-9
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一般向け入門書としては適当かな、という感じ。
本屋でぱらぱらと眺めて、日本の九一式と九七式暗号装置の説明があったので 買ったのだけれど、九一式暗号装置の特徴が別の本で読んだのと違うのでどれを 信用すれば良いのか。ちゃんと調べ直さなきゃ。
あと、2の8乗が248とかいう、計算機屋なら瞬時におかしいと思う間違いがあったり して、どれをどのくらい信じれば良いのやら。


ソフトウェア職人気質

ピアソン・エデュケーション ピート・マクブリーン著 村上雅章訳
ISBN4-89471-441-8
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自分はソフトウェア「職人」かという問に対して、なかなか答を出せずにいたの だが、これを読んで自信持って「職人である」と言えるようになった。 ソフトウェアは製品と作品の両方の側面を持っている。なぜなら、大量生産の 部分はファイルのコピーとかCD-ROMの複製とかそういう作業で可能なわけで、 重要なのは最初の1つのマスターを作成することだからである。
「職人と芸術家の違いとは製品と作品のどちらを作るかかという違いである」という 定義を読んだことがある。多分永六輔の「職人」だったと思うが。その定義に 従うのなら、ソフトウェアは作品であり、ソフトウェア開発者は職人ではないという ことになる。だから迷っていたのだ。
まず、「製品と作品」という区別をもう少し噛み砕くと「同じ品質の物を多数 作らなければならないか、1つだけ優れた物を作れば良いか」という違いになる のではなかろうか。芸術家は1つだけ優れた物を作れば良いが、職人は優れた もの(それは芸術的にも、という意味も含む)を同じように多数作れなければ ならない。作ると言っても全て手作りなので、工業製品的な生産とは違う。 だから「製品」というのは工業が発展して以降は誤解を受けやすいかもしれない。
ソフトウェアの場合、大量生産は簡単なので、それを行なう物は開発者では ない。開発者はあくまで手作りで開発作業を行なう人間であり、それは複数の ソフトウェアを作ったとしても同じ品質の物を作らなければならないという点で、 職人的仕事である。
だから私は「プログラミングとは何か」と聞かれたら、芸術でも工業生産活動も なく、「職人芸である」と答えることにしようと思う。


オッペンハイマー 原爆の父はなぜ水爆開発に反対したか

中公新書 中沢志保
ISBN4-12-101256-9
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内容はタイトルが示す通りなんだけど、オッペンハイマーという人は科学者であり つつも行政に深く関与しアメリカの核政策に意見し続けた人。最終的には諸々の 政治的圧轢の中で政界から追放されるのだけれど。
ここで、科学者がどういう立場でどの程度の深さで政治に関るかというのは、核の 登場以降一つの転換を向かえた問題なのではないかと思うけど、それはネットワーク 屋である我々にも全く関係ない話しではないと思う。身近なところでは、 暗合の輸出をめぐる米国に規制問題や、国内ではIPv6を 国策で進めるのはいかがなものかという意見をもつ人達がいることだ。
ネットワークとて、インフラとして必要不可欠であると同時に攻撃の手段や 争いの温床になるという点では危険なものである。でもそれだけに、国を挙げて の整備や市民への教育というのは同じように必要なのではないかと思う。
ところで、情報セキュリティにおいて問題になっていることとして、 ネットワークがどのように危険かという評価を一般人は出来ないというのがある。 リスクの評価が出来ないからそれに対する投資を行なわれにくいというのだ。 この説明を聞いて正直私はピンと来なかったのだが、なぜかを自問してみたら、 要するに自分は攻撃側に回ることもできる技術力を持っているので、その危険性を 充分理解し評価できるからだという結論を得た。
そうであるなら、やはりその技術の本質を理解している人間は積極的に市民に対して 働きかけ、少氏でも本質を理解してもらおうとする努力をしなければならないのかも しれない。
すくなくとも、「原爆投下は必要であった」というような教育を国家として行なう ような真似はしちゃいけません。


ナショナリズム

岩波書店 姜尚中
ISBN4-00-026436-2
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昭和初期の歴史を軽く学んだ結果、私の興味は「ナショナリズムとはなにか」と いう疑問にいきついたわけです。
さて、この本によると、ナショナリズムには村とか共同体の延長を護って いきたいという感情と、政府機関や知識人層によって規定され教育される ことによって刷りこまれる感情という、二つの側面があるという。 簡単に言えばボトムアップとトップダウンである。
これを読んで僕の頭に浮かんだのは、斎藤環の「ひきこもり系と自分探し系」 という若者の分類方法であった。引きこもり系は自分の枠を規定してその中 に閉じこもる。これは規定されたナショナリズムの中で自分の生き方を規定 する、例えば軍人などに見られるかたちに類似してはいないか。かたや自分探し 系は他者とのコミュニケーションを重視し他者との関係の中での自分は存在する が独立した主体としての自分は存在しない。これはご近所づきあい重視という 古き日本の民衆にありがちなかたちに類似していないか。
とすると、明治から昭和の人びとの生活、二つの側面のナショナリズムに翻弄 された彼達の生活は、現代での若者の二分化にまで何らかの影響をあたえている ように思える。そこに来て、作る会の教科書問題などの昨今の一部での 「ナショナリズム賛辞」である。

人びとは何を求めているのであろうか。現代人にとってナショナリズムは どのように求め与えられるべきものなのであろうか。


一青年外交官の太平洋戦争 日米開戦のワシントン→ベルリン陥落

新潮社 藤山楢一
ISBN4-10-373101-X
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こちらは下記の中條氏よりも数歳歳上の人だが、太平洋戦争の期間外交官として 海外に赴任していた人の自伝的な本。昭和初期の戦争に向かう時代を帝大大学生 として過ごしてそのまま外交官になったわけだが、同じ歴史であっても見る立場 が違うとこうも違う物かと思わせる。
昭和初期の帝国主義で国が動いている時代にあっても、大学生はなんとも瓢々と 呑気にしていて、今も昔も変わらないのだなと思う。しかしそれだからこそ 見えるものもあるのではなかろうか。
歴史を見る時には一つの視点(たとえそれが学者の客観的視点であっても)から だけでは不充分だということなのだろう。


1941年12月8日 アジア太平洋戦争はなぜ起こったのか

岩波ジュニア新書 江口圭一
ISBN4-00-500198-X
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こちらは近代史の学者の視点から冷静かつ客観的に明治以降太平洋戦争に向かう 流れを述べた本。ジュニア新書というくらいで、対象は高校生くらいらしく、 非常に読みやすいし分かりやすい。


おじいちゃん戦争のことを教えて

致知出版社 中條高徳
ISBN4-88474-555-8
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これは良い本だった。
戦時中を陸軍士官学校の学生としてすごして学生のまま終戦を向かえた筆者から 見た戦争は、精神的に軍人として鍛えられてその直後にパラダイム変換を強いられた 人間の視点ということで極めて興味深い。そしてその後の筆者の人生は、正に 昭和の歴史であると言っても良いだろう。
良い意味でのナショナリズムが明確にも不明確にも存在していた時代に、学ぶべき ことは多いのではないかと考えさせられた。現代の日本に不足しているのは 良いナショナリズムではないかと思われ、考えてみれば自分は「良いナショナリズム」 が欠如している人間であり、それに気がついた今自分をどういう方向に持って行く べきかを考えるきっかけとなりそうだ。


戦闘美少女の精神分析

太田出版 斎藤環
ISBN4-87233-513-9
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新人賞の獲り方おしえます

徳間文庫 久美沙織
ISBN4-19-891204-1
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バーチャルネットアイドル ちゆ・12歳

ぶんか社 ちゆ12歳
ISBN4-8211-0784-8
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侍はこうして作られた

新紀元社 新清士
ISBN4-7753-0043-1
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少女たちの戦歴


おもしろい水のはなし


精神の起源について

読んだ日: 2002年5月
思索社 C・J・ラムズデン, E・O・ウィルソン
ISBN4-7835-0126-2
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精神の進化はどの程度遺伝子の影響を受けているのか、という内容。
遺伝子と文化は、互いに絡まりあう螺旋を描いて進化している。遺伝子=文化共進化 というアイデアが提案されている。


世界ハッカー犯罪白書

読んだ日: 2002年4月
文春文庫 P・ロゼ, S・ル・ドラン
ISBN4-16-713626-0
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こういう感じの話は結構好き。でもこのテイストのまんまで小説書いても、 技術屋以外には受けないんだよな。


ナースのおしゃべりカルテ

読んだ日: 2002年4月
幻冬社文庫 小林光恵
ISBN4-87728-603-9
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作者は「おたんこナース」の原案者。ナース物のエッセイでは有名な人らしい。 そういえば、この人の書いた本を結構本屋で見掛ける。
自分は入院2回に加えて現在でも病院のはそれなりに世話になっているので、 「まったく病院のこと知らないわけじゃないんだぜ」とか思っていたけど、 やっぱりお客さん(しかもライト)としてみるのと、内部の人間の視点で見るのと では全然違うものなのだなと思った。そういう意味で、この本は自分と違う視点で 世界を見せてくれた本の一つであった。


会話のパターンで性格を見抜く

読んだ日: 2002年3月
日本実業出版社 篠木満
ISBN4-534-01890-8
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冒頭に出てくる会話パターンごとのダメな性格というのが、全部自分に当てはまる ような気がして、ちょっと鬱。


暗号戦争

読んだ日: 2002年2月
日経ビジネス文庫 吉田一彦
ISBN4-532-19107-6
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技術的、専門的なことは何も書いていないけど、情報戦争に関する 概論書としては面白く読めた。


天才数学者たちが挑んだ最大の難問

読んだ日: 2002年1月
早川書房 アミール・D・アクゼル 吉永良正 訳
ISBN4-15-208224-0
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サイコパスという名の怖い人々

読んだ日: 2002年1月
KAWADE夢新書 高橋紳悟
ISBN4-309-50185-0
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MJ-12の秘密

読んだ日: 2002年1月
KKベストセラーズ 矢追純一
ISBN4-584-00699-7
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MJ-12ってのは地球外生命体との接触の対策をするためのアメリカの極秘プロジェクト として知られているけど、実は宇宙人じゃなくて地球のどこかにいる未知の生命体、 それこそソリトン生命体とかに対抗するものだった、とかいう設定は面白いのでは なかろうか。


未解決事件19の謎

読んだ日: 2002年1月
社会思想社 現代教養文庫 ジョン=カニング編 喜多元子訳
ISBN4-390-11287-2
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ギリシァ神話

読んだ日: 2001年11月
社会思想社 現代教養文庫 山室静
ISBN4-390-10430-6
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とりあえず、ゼウス逝ってよし。


情報操作のトリック その歴史と方法

読んだ日: 2001年11月
講談社 現代新書 川上和久
ISBN4-06-149201-2
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おりしもアフガニスタンでは戦争が始まっている。報道されている 情報はどこまで信用できるものだろうか。いくつかは、あきらかに アジ報道としか思えない内容も流れて来ている。


特捜検察

読んだ日: 2001年10月
岩波新書 魚住昭
ISBN4-00-430524-1
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あとがきの中の「だが、どんな場合でも彼らが誇っていいことが一つだけある。 それは彼らが金銭や酒色の誘惑とは無縁でありつづけてきたことだ」という 文がとても印象的だった。


日本語の作文技術

読んだ日: 2001年9月
朝日文庫 本多勝一
ISBN4-02-260808-0
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社会的ひきこもり

読んだ日: 2001年6月
PHP新書065 斎藤環
ISBN4-569-60378-5
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脳内麻薬と頭の健康

読んだ日: 2001年5月
BLUE BACKS B743 大木幸介
ISBN4-06-132743-7
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博士号とる?とらない?徹底大検証!

羊土社 白楽ロックビル
ISBN4-89706-649-2
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話を聞かない男、 地図を読めない女

男と女は別の生き物だから脳の作りが違うのも当り前だし、向き不向きの傾向が 違うのも当り前だと思う。
しかし、男と女という区別の他に、その中間というのもあるのではないか、という 気がしている。
受精卵の段階では双子であったのに、お腹のなかで大きくなる途中で片方が消えて しまうという現象は、実は結構あるらしい。いわゆるバニシングツインという 奴だ。この場合消えてしまった方はどこにいくのだろう。
二卵性であれば、双子の性別が異なる場合もありうる。性別の違う双子の兄弟が 実は一時期お腹のなかで存在していて、消えてしまったあとももう片割れの どこかにまぎれこんでいるとしたら。
男の子は男の子っぽい玩具が好きだと言われるが、僕はぬいぐるみも好きだ (ちなみにプラモデルも好きだった)。少女漫画を読んで面白いとも思う。
もし僕にバニシングツインがいたとすれば、それはきっと二卵性で女性であった に違いない、とか思ったりする。
いや、分かんないけどね。

MIT アテナプロジェクトのすべて

タイトル
MITアテナプロジェクトのすべて -- 大規模分散システムに挑んだ先駆者たちの記録 --
著者
George A. Champine
監訳, 訳者
森崎 正人, 豊沢 聡
発行所
株式会社カットシステム
ISBN
4-87783-017-0

グローバル・ブレイン

タイトル
グローバル・ブレイン
著者
Peter Russel
訳者
福吉 伸逸, *田栄作, 菅 靖彦
発行所
工作舎
ISBN
4-87502-104-6

日本人の依存を考える

健全な依存は可だ。

面接官の極意書

タイトル
面接官の極意書
著者
加賀 博 & 達人面接官
発行所
中経出版
ISBN
4-8061-0947-9
この先面接することもされることも多々あるだろうから、どうせなら裏を かいておくか、というわけだ。

睡眠の技術

タイトル
睡眠の技術
著者
井上昌次郎
発行所
KKベストセラーズ : ワニのNEW新書
ISBN
4-584-10302-X
最近眠れない。一度寝ると寝続けるんだけど、適切な時間に眠りにつけない。 困ったものだ。この本の副題に「今日から快眠云々」とあるけど、あんまり 快眠には役立ちそうになかった。

色彩の科学

タイトル
色彩の科学
著者
金子 隆芳
発行所
岩波新書
ISBN
4-00-430044-4
以前からGUIの設計と色の認知の関係には興味があった。ちょうどよい 教科書になったと思う。全部理解したわけではないが、後々開く機会が あるだろう。

アンチパターン

タイトル
アンチパターン
著者
William J. Brown, Raphael C. Malveau, Hays W. "Slip" McCormick III, Thomas J. Mowbray, 岩谷 宏 訳
発行所
ソフトバンク
ISBN
4-7973-0758-7
一般書ではなく、一応コンピュータサイエンスの専門書ということになっています。 ないようは、いわゆるソフトウェアエンジニアリングの「べからず」集です。

四人はなぜ死んだのか

タイトル:
四人はなぜ死んだのか
著者:
三好万季
発行所:
文芸春秋
ISBN:
4-16-355430-0
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という本が目に入ったので買ってみました。 内容は、和歌山の毒物カレー事件を扱った、著者(当時 中学生3年生)の 夏休みのレポートです。

医者を志していたため、劇薬や食中毒による症状の違いなどに多少の知識はもっ ていた著者が、新聞とニュースから得た情報から報道内容に不審を抱いて、イ ンターネットと書籍から収集した情報をもとにその誤りを指摘しく過程が書か れています。最後に結論として、四人の死者を出したのは「保健所、医療機関、 警察、行政、マスコミすべての体制の不備のもとで、各分野の専門家の複合過 失によって拡大された社会的医療事故、すなわち「業務上過失致死事件」によ るもの」ではないかと述べています。

科学論文の体裁はなしていないし、堀下げれる箇所はまだまだ多々あるとは思 いますが、中学生がこれだけの内容を書けるのはやはり凄いと思いました。

感銘を受けた箇所は多々ありますが、今の私には内容そのものよりもむしろ研 究者としてのありかたに、自分の現状を照らしあわせたという視点が強いです。

まず

  1. 自分が興味がある分野の知識を常日頃から集める
  2. それに基づいて問題を発見する
  3. 発見した問題を解くために必要な知識をさらに堀下げ、必要の応じて広く情報を収集する
  4. 集めた情報と知識を使って問題を解決する
  5. それを文章として整理し発表する
という、考えてみれば当り前の研究プロセスを中学生が当り前にこなしている という点でした。果たして専門過程に在籍する大学生で、この当り前の プロセスを実行できる人間がどれだけいるでしょう。


ちなみに自分が中学生の時分はどうだったかというと、僕が所属していた 科学部はそれなりに研究活動を重んじるクラブだったのですが、私は「俺は プログラムが書きてぇ」と言って顧問の先生に喧嘩売って飛び出したという 具合なので、あんまり参考にならないです。その時に同期だった友人のうちの 一人は、現在名古屋大学の博士過程で正統派(力技とか裏技が存在しない)の 研究者としての道を歩んでいます。


次に考えさせられたのは専門家としての責任です。これについては、 以前からの思うところを再起させられたというところでしょうか。
私の本業はコンピュータ科学の研究者(の中のハッカーと呼ばれる人種)です。 博士過程の3年なので、すでに学部を卒業して5年目になります。
小中学校の先生は大抵学部卒でしょうから、仕事について5年目といえばそれ なりに経験を積んでいる中堅になりつつあるのでしょう。医者だとすると、6 年在学した後に国家試験に合格してインターンは終了して若手として頑張って いるくらいかな。いずれにせよ、他人の人生や生命を預るまっただなかにいる くらいの年代なわけです。
人間には向き不向きがあるのは事実で、私には教育者としての能力は欠落して いることは自認しており、小中高大とおよそ「先生」と名前がつく職業には絶 対つくつもりはありません(自分だったら、こんな奴に人生預けたくないし)。 だから、先生の例はちょっとここではよそに置いておきます。
さて、計算機ネットワークと人の命は違うものの、目の前に不調な{人間, システム}が来て、そいつを助けることに全精力を傾けることに変わりは ないはずです。医者や医者を目指す人間が仕事にかける真剣さだけが特別で あるべきなわけではなく、およそ専門家と呼ばれる職業を目指す人間は すべて共通するものであって然るべきです。

では果たして今自分身を置く大学という機関、そして自分自身がその真剣さ の下に活動できているのか。
それが自問でした。 (以下追加中)


その後、本全体を通して読みました。結局この著者にこれだけの調査力、 分析力、文章力をもたらしたのは、すべて家庭環境によるものだと 分かりました。そりゃそうですよね。だって、日本の小中学校では 英才教育なんてしてないですし、私自分そんなの受けた記憶ありません。
ただこれで思い出すのは、父親からは算数,理科などのレクチャーを受けては いた(学校の授業からは進んだ内容で)ことです。

(以下追加中)
で、義務教育ってのが何のためにあるかという議論はその筋の専門家の人達の 間では盛んになされているのでしょうが、私の持論は単純です。 「自分の子供が将来どんな分野に進む可能性に対しても対応できるだけの、 必要十分な知識と教育技術を身につけること」


Masahiko KIMOTO <kimoto@ohnolab.org>
Last modified: Fri Aug 11 15:22:43 JST 2006