1. はじめに
  2. 訓練の背景

1. はじめに

1995年の阪神淡路大震災は、情報通信ネットワークの脆弱さを露呈させましたが、一方で、情報通信ネットワークの重要性を示しました。

今回の震災のような都市型の広域災害では、情報が水や電気、ガスなどと並ぶ重要なライフラインとして、重要な役割を担っていることが、あらためて認識されました。情報を正確にそして迅速に伝達することは、被災者の生命や生活を維持するためになくてはならないものとなっていることがわかりました。

さらに、情報も従来の警報や誘導といった政府や自治体からのトップダウンの情報や、マスコミからの情報だけでは、不十分で被災者による草の根レベルの情報と、その伝達も非常に重要であることがわかりました。

インターネットは、被災地域の情報流通、被災地と外部との通信など、災害時の情報伝達手段として、優れた特性を持っています。災害時に発生する通信の急激な混雑にも強く、また、無線やその他の通信手段と組み合わせることにより、頑強な通信網を構築することができます。また、草の根レベルでの、情報発信、伝達手段としても優れています。

一方で、このような特性を生かし、災害時に有効に機能させるためには、技術的、運用的、制度的な課題を解決する必要があります。

WIDEプロジェクトは、インターネット技術を推進するグループのひとつとして、災害時における、インターネットの役割について、真剣に検討してきました。その検討の過程において、単に検討を行い、計画書を作成し、システムの設計と開発を行うだけでは不十分である、という結論に至りました。すなわち、実際に災害を想定した訓練を行う必要があるということです。

訓練を行うことは、災害時の対応をスムーズにするだけでなく、実際のオペレーションのなかから多くの問題点を知ることができ、実用的なシステムの構築が可能となります。また、訓練参加者が、災害におけるインターネットの役割について改めて考える機会を与えます。

このような背景から、WIDEプロジェクトは、みなさまのご協力を得て、第1回のインターネット災害訓練を1996年1月17日に実施いたしました。第1回ということもあり、多くの課題をのこしましたが、一方でたいへん有意義な成果を残しました。

訓練の内容と技術的な詳細については、WIDEプロジェクトの研究報告書、UNIXマガジンのWIDEスナップショットで報告しております。ここでは、第1回の訓練について、簡単にご報告したします。

なお、今回の訓練に際し、参加されたみなさまから、多くの貴重なご意見、ご批判をいただきました。これらをもとに、第2回以降の訓練を計画および実施するつもりでおります。


訓練の背景

経緯

1995年 1月17日、阪神・淡路大震災が起こり、ガスや水道は絶たれてしまいました。電話は、安否の問合わせなどによって回線パンクの状態になりました。このようにライフラインが絶たれた状況においても、インターネットでは生存者情報や被災状況などが世界中に公開され、一躍注目を浴びることになりました。しかし、 といった点を考えると、阪神・淡路大震災の後に行なわれた利用は、単に他のメディアによる情報をインターネットでも流したということにすぎませんでした。つまり、インターネットとしてのメリットを活かした利用は充分にはできていなかったと考えます。

そういったことを受けて、阪神・淡路大震災のおこった後(1995年3月)に開かれたWIDE合宿(*)では、「災害とインターネット」というテーマで議論がありました。会議では、

といったことが議論されました。その結果、インターネットのライフラインとしての可能性を検証するためライフラインタスクフォースが設立されたのでした。

ライフラインタスクフォース

1995年 3月のWIDE合宿の議論の中で出てきた一つのテーマとして、「災害発生時における訓練を行う」ということがありました。

この訓練は次の点を目標にしていました。

また、"「私は生きています」=「I Am Alive.」" というところから、この生存者情報を IAA 情報と名付けました。そして、この訓練自体を IAA訓練と呼ぶことにしました。

その後、5月、7月、そして9月の合宿を経てIAAシステムの内容が徐々に詰められていきました。


lifeline-tf@wide.ad.jp
Last modified: Fri Feb 6 13:05:14 1998