書本(KackBook): ASP型 同人誌版組システム

第1版: 2006年10月26日
第2版: 2007年5月21日
公開: 2007年5月21日
著者: 木本雅彦

1. 背景

2006年の「作家たちの夢束メーリングリスト」での同人誌制作の過程で、 以下の知見を得た。 このとこから、Wikiで執筆し、それがサーバ側で組版されて、印刷所に 入稿可能なPDFを出力できれば、同人誌の制作を円滑に行なえるのでは ないかと考えた。

これまで、オンラインで書籍を販売する試みは行なわれているが、作る側 の視点にたったサービスはあまりないのではないかと思われる。

そこで、書籍組版ASPである「書本(kackbook).jp」を提案する。

2. 利用手順

kackbookは(ASPというくらいなので)Webアプリケーションとして実装し、 利用者はすべての操作をブラウザ上で行う。

kackbookに「作家」としてユーザ登録を行なうと、「個人ページ(書斎)」が 割り当てられる。個人ページには以下が掲載される。

執筆手順は以下になる。

まず作家は原稿を作成する。原稿にはタイトルをつけ、一章に付き 1つの文書ファイルを作成する。文書ファイルには更新日時と バージョン情報が付く。

完成した原稿は「プロジェクト」に提出できる。

執筆は文書ファイル単位で行なう。 文書ファイルの編集はテキストフィールドで行なう(Wikiの編集と同様)。 スタイルとして、TeXライクな書式と、Wikiライクなkackbook書式を 利用できるようにする。 手もとのマシンで編集したテキストファイルをアップロードすることも、 サーバ側で編集したファイルをテキスト形式でダウンロードすることも 可能である。

「プロジェクト」とは、一人または複数の作家の原稿を集めて「編集作業」を 行ない書籍として完成させる作業を指す。

「プロジェクト」で行なう作業は原稿の並びかえ、連結、表紙や 挿し絵などの画像の挿入などが中心になる。 これに加えて、企画検討、進捗管理などを行なう。

プロジェクトトップページはWikiの機能を持つ。議論や管理業務はWikiを 用いて行なう。

ファイルを共有するためのアップローダの機能も持つ。

「編集作業」は、プロジェクトが持つ機能の中でも複雑なものになるが、 基本的に小説の版組のみを念頭に置いているだめ、必要以上に機能を増やさず に簡単に作業を行なえるようにする。

編集が終了した原稿は、組版処理を行ない「書籍」として発行する。 この時、プレビューと再編集を容易に行なえる設計にするよう留意する。

発行した「書籍」は、PDF形式でダウンロードできる。また、執筆者の 本棚に置くことも、第三者に公開することもできる。

公開のメカニズムを改良していけば、電子出版という形に遷移していく ことも可能であろう。

3. その他の機能

「コミュニティ」は、同好の士の間でのコミュニケーションを目的とした もので、メンバー管理と掲示板機能を持つ。

4. 版組の実装について

版組した書籍は、同人誌印刷所への入稿に耐えられる水準でなければ ならない。一方で、公開する場合には不必要な流出を避けれるフォーマット も用意したいという要求がある。 前者についてはPDF形式で出力すれば良い。版組エンジンとしては、 LaTeXを経由してdvipdfmxで変換するか、PerlのPDFJモジュールを用いる方法が 考えられる。その他のスクリプト言語用のPDF生成エンジンもあるが、 日本語の処理などを考えるとPDFJが良いようだ。 後者については、ビットマップにするか、FLASH paper(または同等の 機能を持つもの)を用いる方法などが考えられるだろう。

4. 既にあるのでは?

注: 2007年6月8日追記
karetta.jpというのを見付けました。 2005年からあるみたいですね。kackbookでやりたいような印刷に耐えられる 組版までは出来ないようですが、コンセプトは同じみたいです。

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Masahiko KIMOTO, Ph.D. <kimoto@ohnolab.org>
Last modified: Sat Jun 9 00:22:41 JST 2007