2003年に読んだ小説は約60冊。2003年は「通勤」という概念が減ってしまった 年だったので、読書時間である通勤時間も減ったわけで、まあこんなものかも しれません。厚い本も多かったし。
前作の「嘘つきは妹にしておく」も読んだんだけど、なぜかこのページの記録に
残ってないな。なぜだろう。
うそ、あった。
設定と表現と主張とが、かっちりと噛みあっていて、心地よい。
それでいてテーマとしているのは割とストレートにジュブナイルちっくなわけで、
都市シリーズはもっとメジャーな位置にいてもいいように思うのだけれど、
なぜだから「マニア好み」という位置になっている。なぜだろうと考えてみると、
「一冊がぶ厚く、刊行ペースも速いので、一般人がついてこれない」という副次的
なものなのかなあとか思うわけで、なんだかもったいないと思う。
川上稔を読破してみんとす。
海羽超史朗なんだけれど、文章は相変わらず。オノマトペとルビという、
上手に使えば効果的なはずの表現技術が、ことごとく裏目に出ているように
思う。でも、もしかしたらこれって海羽節って言えるのかしら、とも思ったりする。
秋山節とか川上節とか、そんなの。
決定的な違いは、海羽節はワクワクしないばかりか、鼻につく。極めて微妙。
秋口ぎぐる氏が「描写が不足しているので理解できない奴には理解できない」
とか評していたけれど、うーんまあそうとも言えるかな。視点が切り替わった
時に、それが分からない箇所が沢山ある。で、どういうことかと考えてみたの
だけれど、この作品を映像化すると、視点の切り替えはカメラワークとか
モノローグの声が変わったりとかで表現できるので、多分余計な説明なしですんなり
受け入れられるのだと思う。
でもそれってやっぱり小説としては負けなんじゃないかとも思う。
で、全体の出来についてだが、これがとても面白い。非常によく出来ている。
海羽節が鼻につくところを我慢して、描写不足を補完できるのなら、傑作だと
思う。
いいよーいいよー。乙女しているよー。お兄さんは元気な乙女が大好きだよー。
2003年度ロマン大賞入選作。SFマガジンに書評が載っていたので買ってみた。
でも、正直「うーん、いまいち」という感じ。
科学考証とかはそれほど外しておらず、勉強しているのは分かる。だけど
入門書とか雑誌レベルの知識をベースにしている。しかも、いくつかのガジェットは
具体的すぎて、「それはちょっと目先の技術すぎないかな」と思われるものもあった。
SFというのはサイエンスをベースにFictionのところで想像力を武器にいかに飛躍
できるかが勝負なのではないかと思うのだけれど、そこの飛躍が足りない。いや、
一応重要なガジェットとして脳機能の拡大の延長で電子機器も操作できるようになった
というのがあるのだけれど、説明抜きで飛躍していて、その部分だけファンタジー
な感じ。SFを書こうとしてSFモドキになっているというか、SFマインドが足りない
というか、そんな感じがした。
たしかコバルトのロマン大賞って、審査委員に瀬名秀明が入っていたと思うの
だけれど、それは次回からだっけかな。彼がこの作品をどう評価するかを知りたい。
割と評判が良いので、2巻まとめて購入。ふむ、良い感じでした。
肩の力が抜けているというか、そんな感じ。
文庫が出たのが2001年で、その時から気になってはいたのだけれど、
たまたま古本屋でみつけたので買って読んでみた。
面白い。
もっと早く買っておけばよかった。
なんつーか、パンクなんだけどポップな感じ。マッハで駆け抜けろ!って感じ。
叙述トリック的な部分とか構成とか、良くできていると思うのに、
なぜか今一つ盛りあがれない。なぜだろう。
簡単に言うと、「ケレン味とか格好良さ」が足りないのではないだろうか。
一人称の文章なので、地の文も主人公の語りになるのだが、科白も地の文も
主人公の日記みたいな印象を受ける。
最後も妙にあっさりしすぎているように思える。感動できる話なはずなのに、
感動できる演出を感じられなかった。
で、演出ってのは技術なので、伸びて行く可能性があると同時に
コンスタントに同じレベルのものを出していけることが期待できる。ところが、
ベロニカの場合はアイデアは良いのに演出で損をしているので、アイデアがそう
ポンポンと出てこないとすると次作がどうなるか、非常に不安という点が困る。
ぴぴるぴるぴる ぴんぽろりん♪
私の中では竹岡葉月さんは萌え作家としてかなりの上位に位置しており、 何かの機会があればケッコ……いやお友達になりたいなと思っているのですが、 そんな機会はないだろうないやコミティアとかいけばお姉さんには会えたり するのだろうか。
なんか、戯言遣いのキャラが変わっている気がするが、このくらいキャラが 立っていないと駄目なんだよなあ。
これまでの中だと一番完成度が高いかと思う。伏線なども綺麗に張られていたし、 次巻への引きも上手いし。
完結。なんというか、夏が終わったんだなあという感じだ。
終わり方については、色々な感想が出ているが、僕はこういう終わり方で良かった
のではないかと思う。結局、物語をどういう視点から見るかだと思うのだけれど、
浅羽のやっていることを見て「ああ、自分も若い頃にこんな冒険がしたかった」
「なんでこんなヘタレなんだよ、こいつは」「よし、そうだよく頑張った」
「なんだよ結局ヘタレのままかよ」「でも、人生ってそんなもんだろうな。俺が
浅羽でもきっとヘタレだろうし」と思う、最後の感覚に共感できるかどうかが
賛否の分かれ目な気がする。で、最後の感覚に共感できる人というのは、大人の
視点から浅羽を見ている人で、そういう人は割と榎本とかにも共感できてしまって、
世界全体の動きに対しても共感(しかし多分にあきらめとかそういう感情が混じった)
できてしまうのではないかと思う。
色々と(あまり良くない)噂の多い本なので、読んでみようと思って読んでみた。
ここではあまり多くを語らないことにする。
フラクタルチャイルド続編。
ちょっと川上節が出始めている。改めて見ると、このくらいの話をコンスタントに 出し続ける川上稔ってすごいなと思う。一部にしか受けていないという噂はある けれど。
うむ、ちゃんとしたSFだ。さすが神林長平。
話が分かりにくいラーゼフォンの世界をいじって更に分かりにくくしたわけだけど、
小説というメディアで書かれると、それほど分かりにくいと思わないから不思議。
話としては悪くないと思うのだけれど、コンピュータ用語の説明とか
バイクの乗り方とか、設定とか考証の部分であまりにも不自然だったり
間違っていたりすることが多いのが目についた。
こういうのって、編集部で指摘して直してくれたりしないのだろうか。
アニメとか映画とかドラマだと、時代考証とか科学考証とかを担当する
専門家がいるものなのだけれど。
二年半ぶりの新刊。
表紙とカラーイラストがエロい。
内容は途中なので、続刊が出ないとなんとも言えないが、しかし隨分と風呂敷を
拡げたものだと思う、が、このくらいやってもらった方が面白い。
少なくとも三巻以上になるらしいが、でもハヤカワの文字密度だったら、上下
くらいで収まりそうな気もするので、オーバーライトノベルくらいのジャンルを
作っていくことを、そろそろ考えた方が良いのではないかという気がする。
小学校の頃にジュニア版で読んだ。先日フランス革命の簡単な説明を耳に
したときに、この小説のことを思いだして、そういえばどんな話だったかと
思いながら改めて読み直してみた。以外と覚えているもので、読み進めて行くと
そういえばそういう展開だったなと次々と思いだした。
フランス革命云々の部分については、まあ色々な味方があるだろうな、と
思う。
というわけで、ワタシのことはユタの若大将と呼んで欲しいのデス。
電撃のドクロちゃんといい、何年かに1回このテの電波が発生するのだな。
続編が完成していたが、この本が売れなかったため続編は発売されず、
その後二年近く作者が電撃から干されていたという問題作(問題なのは作者にとって)。
いや、干されていたのか、作者がやる気を無くしていたのかは良く分からないが、
その後の二年間というもの作者の中には黒いものが溜りに溜って、でき上がった
のが「ブライトライツ ホーリーランド」。
その後作者は人間が変わったかのように猛スピードで執筆を続け……たかというと
全然そんなことはなく、今ものんびりと仕事をしているようだ。というかIXの
続きを早く書いてくれ。
とまあ、色々いわくがある作品で、絶版になっているので本屋では手に入らない
のだが、図書館に置いてあったので借りて読んでみた。
面白いじゃん。
個人的にはとても面白いと思った。続編も読みたいと思う。
ただ、時代背景とか業界の雰囲気とか、絶妙なバランスの上に成り立っている
とは思うので、僕のように挌闘ゲームにはまっていた連中を横目で見ていて、
ゲーム作りとかソフトウェア業界の実状も知っている人間には面白いけれど、
最近の普通の若者に面白いかどうかというと微妙なので、今の段階で続編を
出して売れるかというやっぱり微妙だな。うーむ。
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪
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ややこしい性格の女の子が自分から余計な事件に首をつっこんで、自分では
解決できずに誰かに助けてもらう話。
最近の風潮としては、女性が主人公の場合「女の子でも自分からどんどん活躍
して事件を解決する」というのが多いように思うのだが、「自分から事件に
首をつっこむけれど、誰かに助けてもらう」というのも少女漫画的には王道な
わけで、そういう話しだと言える。一時期のコバルトっぽいのかもしれないが、
そういうものまで取りこんでしまうのが電撃の凄さかな。
西尾維新って、コンピュータ系のガジェットの使い方が間違っていないから 好感が持てる。
最初は事件の羅列なので、少しずつ読んでいたのだけれど、後半は一気に読んで
しまった。ラーメンすすりつつ寝たのが午前3時頃だった。
ある意味荒唐無稽なんだけれど、ここまでやって「神話」というタイトルを
付けてしまうと、むしろ爽快である。
ギブスンは読んでいて疲れる。正直、良く分からない。良く分からないのだが、 なんだか読んでいるうちになんとなく格好良いガジェットが頭に浮かんでくる ので、脳味噌を刺激するには良い。
激しく途中。
文章の構成の仕方が前巻までと変わっているような気がするが、なんとなく
ソウルアンダーテイカーの影響なような気もしないでもない。まあ、この巻は
色々な意味で繋ぎっぽいので、次を読まないことにはなんとも。全十巻くらい
かな。
ひさしぶりにサイバーパンクを読んだ。
サイバーパンクって読みにくいのが多いんだけど、これは読みやすかった
ので、入門用におすすめかも。ただガジェットが連続するだけでなく、
ストーリーも小気味よく進んで行く。かなりサイバーな気分に没頭できた。
気持ちよくなったので、読みにくいという理由で手を出していなかった
ギブスンの作品を読んでみようかなという気分になった。
ひさしぶりにSFっぽいSFを読んだ気がする。が、ハードなわけではなく、あくまで
軽目。この人は電撃とかに行った方が、好きなことが好きなようにできるのでは
ないかという気もする。
コンピュータを完全に理解しているわけではない人がサイバーっぽい世界を書くと、
全然違ったメンタルモデルでの表現になるので、それはそれでむしろ面白いと
思った。そして理解している我々としては、それをinputとして更に何をfeedback
するか、だな。
そういえば、ギブスンが実は全然コンピュータ使えなくて、ニューロマンサーも
ワープロが使えないからタイプライターで書いた、とか。
第9回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作。
後宮物語と比べられることもあるけれど、雰囲気は随分違う。こっちの方が
ほんわかした雰囲気に終始している。
第9回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作。
これが始めて書いた長篇で、しかも2週間で書いたというのだから、なんともはや。
ものすごく勢いがある。
倉本由布のひさしぶりの現代物なのだけれど、シナモンハウスの頃とは随分と
雰囲気が違う。女の子一人称じゃないってのもあるのだけれど、昔の女の子って
いう感じななくて女の人って感じなんだな。まあ、作者も日々変わっていっている
わけで、作品が変わっていくのも当然なのだろうとは思うけれど。
終わり方も、倉本由布っぽくない。でもそれもまた作者の中の変化なのかなとも
思う。
主人公がどうして強いのかが分からん。特殊能力ってところに何か伏線が
あるものだと思っていたのだが……。
どうも主人公に共感できない。でもこれはもしかしたら趣味の問題かもしれない。
ストーリー的には、多分主人公に敵対する立場のキャラが登場しないのが一番の
欠点な気がする。スクライドで言うところの劉鳳に相当する人が出てこない。
第9回電撃ゲーム小説大賞大賞受賞作。
短編のときも思ったけれど、基本的にこの人の文章好きかもしれない。
内容については、アーヴェイがやさぐれたキャラの割りに科白が優男な感じ
がして、もっとやさぐれた言葉遣いだと良かったかなと思った。
これまでとは違って軽い雰囲気のようでもあり、やっぱり古橋調でもあり。
設定とかストーリーとか、あえて如才なくシンプルにまとめたという感じがする。
で、シンプルにまとめつつも、古橋調を交えていて、結果的に成功していると思う。
狙いどころは良く分かるので、今後に更に期待しているのだけれど、この路線で
いくのならそれなりの刊行ペースを保つ必要があるように思う。編集さんが
いかに尻を叩くかにかかっているような。
あと、表紙でネタバレするのは勘弁してほしいと思った。
三分の一くらいしか読んでいる時間がなかったけれど、諸般の事情で図書館に 返さないといけなくなったので、ここで一旦サスペンドすることに。
一昔前の青春小説と最近の萌え系小説との違いはというと、主人公に共感できる
かどうかではなかろうか。「萌え」ってのはただ愛でるだけの一方通行な感情な
ように思える。青春小説には主人公の気持ちになって共感し一体化できるという
特徴があった。勿論最近の小説で「萌え」があっても、主人公に共感できる小説
はあり、そういうのが高い評価を受けていることは忘れてはならないけど。
まあそうは言いつつも、
バイオリンが弾けてピアノも弾けて柔道が強くてテニスも出来て幼馴染みの
女の子がいるなんていう主人公に共感できるかというと、微妙な訳だが。
だって羨ましいから。
乙一の日記によると、ハリウッド脚本術という本を読んで小説の書き方を勉強
したとのこと。言われてみると、この短編集の「失はれた物語」なんてのは、
『感覚の一つ(またはそれ以上)を無くしてみる』という、文学の世界では
極めて良くあるガジェットである。それは「暗いところで待ち合わせ」にも
共通するものだな。
でも、物語の組み立て方は教科書で勉強できても、乙一的な雰囲気ってのは、
多分作者が世界というものをどういう目で見ているかに依存すると思うので、
はやり本人の資質だと思う。同じ物を見ていても受け取る物が違うという
奴ですな。