相変わらず西尾維新と秋山瑞人に加えて、ちょっと川上稔の日記を足して、 ねっちょりと混ぜて薄めた感じ。だが、単なるコピーというわけでもない。 ライトノベルを読んでライトノベルを書きましたというような作品は 個人的には嫌いなのだが、この作家はもしかするとライトノベルが無くても 小説を書いていたと思うけれど、たまたまライトノベルで育成されました というタイプなのかもしれない。だとすれば、なんだか行き詰まり感のある ライトノベル業界を打破するのは、もしかしたらこういうタイプなのかもしれない。
「あと2年」という期限が定められた話しというのは、その終末へと向かう 緊張感をいかに盛りあげるかが物語作りの骨頂だと思うのだが、この話しは その点をあまり重視していないように思う。というか、多分短編連作で 数巻続ける企画として書かれているからなのだろうが、一巻が終った時点では 伏線も回収されていないし、終末への緊張感もない。どうせ出版社として、 一巻出してみて売れ行きがよければ次も出して、そうでなければ途中で打ち切るの だろうから、せめて最初の一巻はその中で完結するような構成にして欲しいと 思った。
ティプトリー的、異国感。
良く出来ていたと思う。面白かった。
何が良いかというと大人(といっても20代だが)がちゃんと書けていて、
それだからこそ子供が子供の理屈に悩むのが対照的に見えたのだろうと思う。
でも作者が発散している「世の中のこういうところが嫌なのよ、ムキー」ってのは、
一般小説の女性作家の多くが割と書いている内容な気もする。
そういうのは、若い作者は世間を知らないから書けないし、世間を知らないまま育った
小説家は同じ理由で書けないし、もっと世間を知ってしまうと逆に「そうは言ってもねえ」
と納得しちゃうから書けない。
というわけで、やっぱり30歳前後の女性作家ならではなのかなと思う。
そういう感性は世の中的には別に少なくないがライトノベルでは貴重ではある。
でもこの本はハードカバーであって電撃文庫ではない。
戦略として正しい(多分過去に少女小説作家が次々と一般小説に進出したのと同じ
ようなものを狙っているのだろう)が、これが電撃文庫の限界なのかもしれない。
ところで、前作で気になったこの作家の弱点が直っているかというと、どちらかと言うと
単に回避しただけのように見える。
例えば国家レベルの危機管理の認識の甘さについては、
本作では国家を遠くにあって主人公達と対立するものとしたことによって、描写不足を
カバーしていたように思う。
作者本人の興味と外れる部分の科学考証の甘さについては、前作ほどは気にならない
にしろ、やっぱり細かい突っ込みどころはある。
例えば、白鯨は太陽光線を吸収してエネルギーとしているとのことだが、可視光を
吸収したら影になるので目視できてしまう。もし表面積が大きいので、少しだけ
吸収してあとは透過していて、だから目の良い光稀だけがなんとなく見えた、とかいうなら
説明できるが、その記述はない。
あと、「○○さんの携帯電話の波長〜」って、トランシーバーじゃないんだから。
とはいえ、こういう考証のところは最早作者自身には期待していないので、周囲の
ブレインがきちんとチェックするようにしてほしい。
かつて月にも火星にも金星にも、宇宙人がいた。ウェルズやバロウズの時代だ。
いまはいない。
かつて21世紀は誰もが宇宙にいける時代だと思っていた。
いまは誰もそんなこと思っていない。
じゃあ宇宙に浪漫は残っていないかというと、そんなことはない。
それを分からせてくれるのがこの小説である。
宇宙は浪漫である。
問題にぶつかった時に技術と知恵で解決していくことも浪漫である。
少女に振り回されることも浪漫である。
浪漫が満載の小説であった。
もう最初の一章から熱くて涙が出てきたし。
ちょっと首を傾けて物の見方を変えると、世界が変わる。それは世界が
物理的に変わったのではなく、認知の変化なのだが、認知する主体にとってその
変化は世界の変化に等しい。
表題の「あなたの人生の物語」を始め、そういう短編が集約されている。
やっぱりSFは面白いと思った。
しかし、こういう話を書いて一般小説関係に投稿してもあんまり受けない
んだよなあ、とか思ってしまい、そういう見方は小説読みとしては良くない
のではないかと反省した。
自分はどういう小説が好きなのか、素直に自省しなおそうと思った。
うむ。作者の中に何か黒い物が溜っているのだろうな、という感じ。
MF文庫J新人賞第0回の優秀賞受賞作。西尾維新+秋山瑞人+色々を混ぜて 若干マイルドにした感じ。もうちょい熟成が必要かもしれないが、それだけに 継続して書いて欲しいと思う。
いい加減飽きていた、かと思ったら、普通のストーリーが進もうと している。もはやドクロちゃんはどうでもよくなっている気が。
ごきげんよう。二冊続けて読んでみた。 うん、まあ、面白い。でも期待していたほどうまい文章じゃなかった。
ごきげんよう。
ふむ、MFはこういうほんわか系でいくのか、という感じ。でも文章の下手っぷりが とても気になった。あと2、3作書かせて修業をさせてから世に出すべきなレベルの ように思う。
完成している。しかし、なんかザラザラ感がする。それが特徴なのかと思ったけど、 このザラザラ感は女性作家に共通するザラザラ感なのではないかという気がして きた。個人的には、SFなりファンタジーなりの、オブラートで包んだほうが好きだ。
「本格」であるかどうかは疑問はあるが、うんまあなるほどねという感じであった。 しかし、前半のギャルゲーみたいな文章はとても鼻についた。こういう点は どんどん直して行かないといけないと思うのだが。
古橋成分補給。こんな感じのが、半年に一冊くらいのペースで出ないかなあ。
軟乳という設定をもっと活かすんだ。
考えてみれば推理小説なんてのは、作中で文章として記述された情報の
世界の中で推理を展開させたりするわけで、そういう意味ではほとんどの
推理小説が叙述トリックと言えるのではなかろうか。
そしてそれは同時にセカイ系とも言えたりするわけだ。
読んでいるうちに、典型的なキャラクター造型に対する挑戦かと思い、
セカイ系に対する挑戦かと思い、推理小説に対する挑戦かと思い、
後書きを読んだらそういう分析に対してまでも挑戦していた。
山田風太郎の荒唐無稽っぷりは、胡桃沢耕史の荒唐無稽っぷりと似たところが あるように思う。
作者はかなりSFマインドを分かっていると思う。設定において、人間と非人間
との交差具合がとても良い。
だけど、巻末の用語集は必要ないと思う。このくらいの世界観や設定だったら、
普通のSF読み人はすんなり受け入れられるだろうし、これを難しいと感じる読者
は最初っから相手にしなければいい。用語集が世界設定を固めるためでなく、
読者への説明という目的を(例えば編集者が)持たせようとしているのなら、それは
読者を舐めているとしか思えない。
それはさておき、こういうSF心を持った作品はどんどん出して欲しいと思う。
一年ぶりの古橋キター。
面白いには面白いのだが、冷静に読んでみると、文章のまどろっこしさというか ムラというかが気になる。もう一練りできるのではなかろうかと思う。 それと、まどろっこしく感じる部分はもう一つあって、心情などを論理的に地の 文で述べている箇所が多々あるのだが、それがエリコの女性的な部分と相反する というか、そんな論理的に説明つけないほうがいいんじゃないのかと思うのである。 ここらへん、女性を書ききれていないとでも言うか。
芥川賞受賞作。文藝春秋に掲載されていたのを買ってきた。
前作「インストール」と比べて、言葉の選び方が丁寧になっているように
思う。その点が、非常に好感が持てる。
基本的な「立ち位置」という視点というか、は前作と通じるものがある。
なんか、作者自身、自分の立ち位置を決め兼ねているような、そんな不安定さを
感じる。もしかすると、ライトノベル系を読むと「自分が『何でないか』」が
分かるのではないかという気がしないでもない。
彼女の立ち位置というのは、同世代の女性に対して、斜め上のあたりから見下ろして
いるような感じがする。そして多分そういう視点というのは、同世代の女性には
あまり受け入れられないのではないかという気がする。もし彼女が二十代後半くらい
になって、同じ様な視点を持ち続けたとすると、同世代の「かつて同じような斜め上の
立ち位置にいながらも集団に迎合してしまった元少女」から支持されるように
なるのではなかろうか。
ただ、現在のところ、彼女の持つ視点というのは、商業的価値のみにスポットが
当たっているきらいはある。だけど、そんなことはあまり気にせずに、斜め上に
向かってもらいたいものだと思う。
フラクタルチャイルド4。
色々種明かしが始まろうとしているが、なんかペースが遅いというか、
一冊の中に12回放送のアニメの2話分くらいの内容しかないのが、いまいち。
同じ「雰囲気系」としては、下の電撃の新人よりも面白かった。まあ、キャラが 確立されているし、手慣れているから仕方がないのだが。
第10回電撃ゲーム小説大賞 銀賞受賞作。
これも雰囲気系というか、阿智太郎系。ありがちなネタなんだけれど、
結構きれいにまとめていると思う。
ただ、阿智太郎系というだけあって、電撃的には同じ系統の作者を
沢山抱えてどうするつもりなのだろうかという疑問はある。こうなったら、
いっそのこと作家性というか個人プレイではなく、アニメーションみたいに
複数人で企画を立てて、執筆だけそれぞれでやるような製作体制とかを
作ってしまったらどうだろう、と思った。
第10回電撃ゲーム小説大賞 金賞受賞作。
雰囲気で読む感じ。だけど、いまいち語るポイントが少ないように思う。
雰囲気+和風という点だと、昨年の「七姫物語」のほうが世界観作りが
完成していたように思うし。
全体としての軸になる話が見えるようになると、読後感が良くなるのかなと
思った。ただ、言葉の使いかたは今期の三作のなかでは一番上手だと思う。
第10回電撃ゲーム小説大賞 大賞受賞作。
この話は簡単に言うと、「女性のエゴ」の話である。最初を読むと全然そんな
感じには見えないのだが、最後まで読むと結局その一点につきると思う。
自分とは全然違う感性がかいま見えるという意味で、面白かった。
が、あまりにその一点に集中しすぎたため、カウンターパートとして登場する
入江という人物が、どこか甘く描写されている。彼側のエゴと正面衝突する
ような部分があっても良かったのではなかろうか。
あと、考証が甘い。軍事関係は周囲のつっこみを受けて直したというようなことが
あとがきに書かれているが、それ以外の例えば以下の点。