[最新の感想] [2005年の感想] [2004年の感想] [2003年の感想] [2002年の感想] [2001年の感想] [2000年の感想] [1999年以前の感想]
10年くらい熟成させて読まれ続けたファンタジーを読んだような気分。満足。
表面は甘くてソフトなのに、中は濃密。
ローマを舞台にした、ちょっとだけ歴史物、だけどメインはファンタジー。
歴史ファンタジーであることに頭を切り替えるまで良く分からない感があったけど、
切り替わったらすんなり読み進められた。ファンタジーは読者を導き入れる方法が
難しいのかもしれない。
引続き赤坂真里。やっぱりねっちょり感を感じる。
で、冒頭を読み進めていって、しばらくしたら「説明する」文章が出てきた。
ここで、ほっとした。そこまで生理的に理解しがたかったものが、説明が登場する
ことで理性で理解できるようになった。
そこで気が付いたのだが、逆に自分が生理的に理解できない部分を、
生理的に理解してしまえる人もいるのだろうな、と。
斎藤環による書評の中で、「赤坂真里はサイバーパンクだ」という内容のものがあり、
そうなのかと思って買ってみた。
ああ、なるほどね。皮膚感が確かにサイバーパンク作品が抱えるそれと似ている。
なんか、ゼリー状のもののなかに腕をつっこんで、泳ごうとするんだけどうまく泳げず、
身体にねっちょりとしたものが貼り付いて、それが皮膚の感覚を延長させるような、
そんな感じ。
正直言うと、なんか生理的に気持ち悪い。
作品としてどうのというのではなく、生理的に読むのがとても大変。
だから全然読み進められなかった。
壮大なまでの荒唐無稽の面白さは相変わらず。ただ全体的にページ数が少ないので、途中の
描写とかエピソードがあっさりと通りすぎてしまっている箇所があるようには思う。
SF的ガジェットとして面白いのだが、文章とか表現とかに、微妙におっさん臭い部分
が混じる。このあたりの10年くらいの年令差というのは大きいのかもしれない。
あとクライマックスはこれでいいのかなあ、という気がしないでもない。
イーガン的に無茶な話の広げかたをする必要はないとは思うけれど、もし
身近な問題に話を落すのであれば、もうちょっと読者の共感を呼べるような形に
しないといけないのではなかろうか。
今年の星雲賞国内長篇部門受賞。
なんといいますかね、視点というか視線の向いているベクトルというか、そういうのが
ものすごく共感できる。
某所で人気があったので買ってみた。
良いですね。物語を物語に組み込むというメタ的入れ子構造的なものは、
個人的に好きなのですが、この話では太宰治が上手に埋め込まれている。
話の作り方として問題なく面白いと思う。
上手な文章だとは思うのだが、純文の真似してみてます感があるような
印象がある。もっともっと時間をかけて練りこめると思う。
宮部みゆき的。財布が主人公だったり、色々な視点が絡まっていったり、最後が
その当時流行っていたアレ系だったり。
うん、とてもシンプル。分かりやすい。ちょっと奇妙な設定と愉快なキャラクターをベースに、
素直なストーリー展開というのは、ファミ通文庫の王道かと。
ある意味でのジュブナイル。というか、現代におけるジュブナイルというのは、 こういう感覚なのかもしれない。と思う一方で、実際にはそんなに若年齢層は対象に していないよなと思い、どこかで小学生的青さを捨てられない10代後半〜20代向け かと。
西尾維新は「内容が薄くて何が面白いのか分からない」という感想を持つ人も多い
のだが、ファンも多い。一般的に賛否両論があるのは良いことだと言われている。
私自身は面白いと思う。その面白いという感覚の中には、ある種のライブ感的な
ものが混じっていると認識しているのだが、このライブ感は自分にとって何なのだろうと
考えることがある。
早い話、自分は対象年齢から外れていて不思議ないのである。
何なのだろうか。この感覚は重要だと思いつつ、理性のどこかで違和感を持たないと
いけないのではないかという気分もなんとなく抱えている。
戯言シリーズ完結。もはやミステリーではなく、能力バトルと化しているけど。
綺麗にまとまっているけれど、なにせ最初から最後まで戯言なので、煙にまかれている
気分はぬぐえないが、でも単なる戯言だらけの人生に終着していないんだよな。
引続き、殺竜事件の世界を舞台にした出来事。殺竜事件の主要な登場人物が 主役なので、殺竜事件を先に読んで置くべき。
世界と構築した殺竜事件と比較すると、小粒という印象は残る。
最初の方で日本語のおかしな箇所があり、あれ?と思ったが、それ以降はすんなり読めた。
前作「殺竜事件」では世界のあちこちを移動した訳だが、今回以降の作品では
はその中の一箇所を舞台として事件が起こる。一度世界とキャラクターを作って
しまったが故に出来る技だなと思う。しかもその世界とキャラクターが、やはり
上遠野浩平なのだ。
ミステリーとしてどうかという点については、割とどうでも良い。というか、
ミステリーを読まない人間が外から見ていて思うのだが、例えば「密室物」ってのは
「ツンデレ」と同じように、ある種記号化されていて、その記号化の枠を保ちつつ
その中でどうひねるかということを試行錯誤しながらミステリーはというジャンルは
生き残っているように見える。読者からしてみれば、「密室本」と書いてあれば
安心して安心して密室本という心構えで読めるわけだ。
そう考えると、ライトノベルで「ツンデレとか飽きたよな。次はなんだろう」ってのは、
記号を消費しすぎてやしないだろうか、とか思ったり。
前作の欠点(ちょっとしたことで理系知識のなさが露呈する)がなくなって、すんなりと
楽しんで読めた。きちんと調べた範囲のことを書いているとも言う。
「塩の町」では本当の主婦だけの視点が強調されているようだった危機管理についても、
それなりに勉強したようだ。その上で、型破りのキャラを出すことによって盛りあげている。
安易なヒーロー像に頼っている感がなくはないが、そういう分かりやすいのは、結構好きだ。
2人の自衛官とか。
ただ、これがSF者に受ける理由というのは、女性視点の斬新さが一種のセンス・オブ・ワンダー
だからという点だと思うので、そこは冷静に評価しないといけないのではないかという
気はする。
もうちょい自衛隊登場部分のカタルシスがあっても良い気はするが、そこをあえて抑えた
ことで、警察の立ち位置が強調されているとも思う。
何にせよ、素直に楽しめる小説だった。
重要なのは勢い、だな。ただ、今回は「溜め」の一冊なような気はする。
次に向けてどう爆発するかが楽しみ。
今年の電撃の銀賞以上をようやく読み終えたわけですが、個人的な順位は、
哀しみキメラ>火目の巫女>狼と香辛料>お留守バンシー
かなあ。
お留守バンシーはいいんだけど、深沢美潮風味が強過ぎる気がする。
完結。といっても本編は7巻で終っていたのだけれど。
この巻は外伝っぽくもあり、長いエピローグっぽくもあり。
現代作家ガイド「ウィリアム・ギブスン」を読んで、改めてギブスンを最初から読み直そう
と思った。で、全部買い直した。とりあえず一冊目。
マンションで発生した殺人事件のルポ形式で話が進む。
宮部みゆきって本当に「普通の人」を書くのがうまいし、そういう庶民が好きなんだなあと思う。
その丁寧な視点は愛情と呼ぶしかない。
いや、二十年たてば、文章のトレンドも変わりますよ。
上遠野浩平は、作りだす世界の空気を楽しむものだと思うので、細かいつっこみを入れるのは
野暮かと思う。それにしても、ちょっと文章がたどたどしいところがあったのが気になるけど。
終わり方は、ああメフィスト系のノベルズっぽいねという感じ。
久しぶりに倉本由布の現代物を買ってみた。最初のほうでは、先が読めるかなと思いつつ、
なるほどこういう落し方にするのね、と思う。
20年近くたてば読むほうも書くほうも色々変わるわけで、読んでいる自分もなんとなく
斜めから物を見るようになるし、書いているほうも何か上からの視点だなあとか
感じる。
でもそれはそれで仕方がないことなのかもしれない。