うーん。文章が下手。というか、10〜20年くらい前のソノラマのノベライズみたい。
と思ったら、ソノラマ文庫だった。文章や設定や表現の古くささを、
ウルトラセブン当時の映像や演出に頭の中で置き換えてしまえば、まあ許容範囲か。
扱っているネタはとても面白いと思う。
古橋秀之がノリノリだ。
砂糖菓子系?とも思ったけど、ちょっと違うような気も。
終りかたが短編小説みたいだなあと思った。
軽い。薄い。文章もすかすか。陳腐化するライトノベルの典型例だなと思った。
当時の富士見ファンタジアはそういうものだったのかもしれないが。
当時はこれが良かったのかもしれないが、ライトノベルすらも練成されてしまっている
今読むと、2倍の密度にしてもらわないと物足りない。
電撃hp連載の短編をまとめたものに、最後に一作品追加した短篇集。
連載を読んではいたけれど、改めて読むと、同じようなリズムでいて雰囲気の異なる
作品が楽しめる。
特に最後の「むかし、爆弾がおちてきて」は、ちょっと泣けた。
読後感というか、達成感というか、とにかく満足した。
そしていきつく先があれというのも、まあでもそんなものだよね、と思う。
ある意味、ひきこもりといいますか。
でもあそこまで探求すれば、最後はひきこもっても許されるのではないかと思うし、
ひきこもりたければまずあそこまでやれ、と。
この本を読んでいたら、通勤に使う電車がホームに入って来る姿に、奇妙に興奮するように
なってしまった。
幼い頃に、両親が「シベリア急行」にあこがれていたのを思いだした。
僕は何がそんなに魅力的なのか良く分からなかったけど、この本を読んで
なんとなく分かったような気がする。
通勤時間に読んでいると、ホームに走り込んでくる何の変哲もない地下鉄が、
特別なもののように思えて来た。
宇宙に行きたい。
無理矢理な感じが残る。
やっぱり、「最後に向かう物語」なのだから、1巻も2巻も最後に直面することの
恐怖を描き、それを積み上げていって、最後に爆発するような構成になっていた方が
インパクトあったというか、正当派なのではないかという気がする。
となると、みんな一斉に最後の時を迎えるという設定に無理があったのだろう。
ばらばらに次々に、最後を迎えていくようにしたほうが良いのではないか。
ありがちかもしれないけど。
あと、大人が馬鹿っぽく書かれているのがいまいちだった。大人も政府も、
確かに馬鹿だが、それほどの馬鹿という訳でもない。これはむしろ作者が大人の世界を
見えていないだけなような気もする。
ポップな感じでヒーローもので、ラブでコメかと思いきや、ラブな部分は少しずつ
ハードになっていく。桑島節全開。
でもやっぱり最後は少しだけハッピーに向けて動きだしたいですねという終り方。
そうだね頑張ろうね好かれたいよね。
中短篇集。どれも良い出来。そして基本的に前向き。人間全肯定。
僕なら「ああやってらんねえや。人間なんてな」で終らせるところが、
どれもこれも前向きに書かれている。
これを読んだら、少しだけ生きる気力が湧いてきた。
僕は挌闘ゲームはそれほどはまった方ではないし、その頃から徐々にゲームからは
離れて行ってしまったのだけれど、でもやっぱりこの作者が発散する同時代性みたいな
ものには、ものすごく共感できる。
こういう「空気」みたいなものはとても大事ですね。
ちょっとファンタジー色に染まろうと思ったので、積ん読の中から取りだしてみた。
ナルニア物語のルイスのSFファンタジー。
小学生の時に、ジュニア版(タイトルは「生きている首」だった)を読んで、
妙に印象の残っていたのだが、たまたま正式な題名を知ることができたので読んでみた。
これが1920年代に書かれたということは脅威である。十分に面白い。
むしろ当時の情景描写が逆にSFっぽい雰囲気を出している。
もちろん同じものを現代の作家が書いても古くさく思われるだけなのだと思うが、
例えば「英国恋物語エマ」がむしろ今だからこそ面白かったりするのと同じように、
古い雰囲気を面白く表現できないものだろうか。サイバーとかスチームパンクに
逃げずに。
相変わらずの桜庭節で、面白い。砂糖菓子と比べると、弱冠ナマっぽい感じか。
眼鏡、ポイント高し。
やられた。面白い。
ヒロインは電波とツンドラ(ツンデレではない。今の所。あまり)という、
ある意味定型的なものなのだが、定型っぽさをあまり感じないのは、主人公の
軽妙なキャラだろうか。ごく普通のラブコメが、普通に面白いというのが、
かえって新鮮だった。
MF文庫Jライトノベル新人賞審査員特別賞受賞作。
軽い内容なのだが、文体は語り口はどこか落ち着いた感じがある。良くも悪くも
作者の年齢のせいではないかと思う。しかし、一人称なのと、イラストが軽い
ロリ系イラストなので、何か違和感がつきまとう。もう少しはじけた文体のほうが
良いのだろうなと思った。
あと、落ち着いた文体の割には、文章の練り込みが甘いかなあという印象もある。
狙いは分からないではないのだが、これで良いのかなあという感覚がついてまわった。
あと、コンピュータ関係のガジェットや、作者が「Webプログラマー」とか自己紹介しちゃっていることについては、コメントを差し控えさせて頂きます。
うむ、面白い。外部から見た日本人の面白さというのは、やっぱり外部から見た
ならではの面白さがああるなと思う。「招き猫」は傑作だと思った。
「タクラマカン」はもうちょっとストーリーとして捻りようがあるかなと思う。
ガジェットばかりに目が行きすぎているのではなかろうか。
例によって、ちんたらと読む。途中で別の本を読んだり、通勤電車がかったるかったり して、妙に時間がかかってしまった。
この人は、コンピュータのこと良く分かっていないのなら、無理にネタにしなければいいのに、と思った。
欠点と言えばそれくらいか。理系のセンスが良いところは、良い。
素直に面白い。
構成がちゃんと物語している。いわゆるSFの中には、ドラマ構成が
なんだこりゃというのが少なくないのだけれど、この話しはちゃんとエンターテイメントと
して成立している。ジョイントという設定がうまいことドラマにからまっているし。
最後の幻想的描写は、今の時代となっては「ああ、あれね」という印象が否めないが、
それは仕方がないことなのだろう。
この下のカスタム・チャイルドと、方向性(少女漫画ちっく)とか構成(最初に短編的に
まとまった章が二つくらい続いて全体のストーリーへと続く)とか、似たような部分が
多いのだけれど、圧倒的にカスタムチャイルドのほうが上手い。
何故かを考えてみた。結局、この本のあら捜しになってしまうんだけど。
まず文章。
心情や行動原理を、いちいち地の文で説明している。「〜〜だから〜〜と思ったのだ」
みたいな感じで。とてもくどいし、「こいつの心理はこうなんだからな」という
読解を強要している感じもする。
次、考証。
どいつもこいつも覚悟が足りない。機動隊の行動原理が変。
話の構成。
というかですな。この話は、死に向かう終末物なはずな訳ですよ。なのに、終末
なんか関係なしにまったり暮らしてみたり、終末と関係ないところで死んでみたり
している。
結局「17歳で死ぬことが運命づけられている」「死ぬ前の1週間だけ超人的な能力を
使える」というのは、緊張を出すのにとても良い設定だとは思うのだけれど、
その設定がまったく活かされていなく、まったく緊張感がない、というのが欠点の
一番大きなものではないかと思う。
SFとしてはそう目新しい設定ではないのだけれど、綺麗にまとめていると思う。
全体にただよういい感じに力の抜けた雰囲気が、とても良い。
個人的には文体の癖が気になるが、それもまた作者の個性の範囲だろう。
話の構成も手慣れた感じがある。だいたいキーリの一巻と似たような構成。
なんというか、安心して読める。
ふざけた振りして、何故か心の奥の所を細い針でつつくような、そんな感じ。
そして良い感じに、物語が盛り上がって来た。この先も期待できる。
この作者は、少女から女になってまた少女に戻ってしまったタイプの人なんじゃ
ないかなあ、とかふと思った。すごく勝手な想像だけど。
というわけで、桜庭一樹を三冊買って、まとめて読んでみた。かなり気に入っ
てしまった。どれも違う設定なのに、同じような桜庭ワールドを構築していて、
でもそれは僕から見るとすごく新鮮で背筋が緊張する。
この話は日常と非日常が不思議にいりまじり、結局非日常で誤魔化されてしまっ
たような感じではあるのだけれど、でもその非日常もまたリアルに間違いなく
存在している。
なんというか、こういう感覚を僕はなくしてしまったなあ、と本気で思う。い
つ無くしたかは割と明確で、一時期頭の中が訳分からなくなっていた時期があ
り、なんとかそこからは抜けだせたのだが、抜け出す時に色々捨ててしまった
のだろう。1度捨ててしまったものは、もう戻らない。
富士ミスだけれど、ミステリーの部分は富士ミスというくらいであまり問題で
はなく、いちおう細かなトリックっぽいことは仕込まれているけれど、それも
あまり問題ではなく、これもまた少女の叫びの物語である。
砂糖菓子であれ、実弾であれ、弾丸を撃たずはいられなく、でもその弾丸は敵を
撃ち抜くにはあまりにもか弱くて哀しい。
あ、本文と関係ないのだけれど、この小説は僕には珍しく、イラストの雰囲気に ちょっと違和感を感じてしまった。
最初の30ページくらい読んで興奮した(エロくない意味で)。こりゃ、すごい。
女の子が叫んでいる。おばさんが色々不満を叫ぶタイプの小説は良くあるが、
少女の叫びはこんなにも強烈なものかと思った。
きれいにまとまっている。終り方もご都合主義でなく、良い。
後書きの「こういうこと考えて書いたんです」というのが、ものすごく共感できる。
こういうのが、半年に一冊くらい出てくると、いいな。
燃える。熱い物語だ。それでいて萌えポイントも外していない。すばらしい。
「本当の悪人がいない」という部分について、賛否があるようだけれど、
僕は世の中そういうものではないかと思う。悪いことをしようと思って悪いことを
している人は、そんなにいない。たまにいるのは、ただ頭が悪いだけ。
サラリーマン向けの話しで徹底的に悪い人とか嫌な人とか出てくるけれど、あれも
ある意味一面的なものの味方でしかないと思うしな。
たしかに本当に頭の悪い人が偉いポジションにいたりするとどうしようもない
ことはあるけれど。
そういう意味では、小川一水の作品は性善説というか性良説なのかもしれない。
面白いんだけど、こういうの書いても(以下略。
でもやっぱり面白い。物の見方、物の考え方、物の理解の仕方に使っている脳味噌の
部分が、びりびりと震える。
「こういうことをやりたかったのか、そりゃ怒るわ」と思った。
冲方版のファフナー。アニメの前半(一輝が島を出る直前まで)を書いたもの。
アニメと比較しながら読むと、アニメではできない小説ってのはこういうのだよなと
いうことが良くわかる。